「1年生の水泳を異質協同のグループ学習で」 ーわしら同志会の体育実践ー
ー遊んでいる子も巻き込んでー
(1)オリエンテーション プール開き前日、教室でプールサイドヘ行くまでの手順を説明した後、学習の内容「水泳もグループで勉強すること」「みんなが浮けるようになることを目指すけれど、顔を水につけることから勉強すること」を話した。そして、「普通の所と水の中では、どんなことが違うか」を考えさせた。いくつかのやりとりで、息ができなくなることが一番怖いとがわかったので息を止める練習と息つぎの練習をした。グループは、私が決めてすでに生活班としてスタートしていた。 |
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(2)第一次 浮くまでの水慣れ @顔つけ、水中歩行(3時間/6月17・18・22日) プール開きの日、子どもたちの反応を楽しみにプールに行った。事前に教室で、勉強する内容と方法を、グループノートを見ながら話をし、練習の方法、2人が練習し2人がそれを見る(どこに立ってみるかなど)は、シミュレーションさせた。 初めてのシャワーは、泣き出す子はいなかったが、苦手だと聞いていた2人(さおり、ゆうこ)は、今にも泣き出しそうな顔で、下を向いて水を浴びていた。 ワニのもぐりっこでは、鼻をつまんで何とか顔はつけるが、すぐに出てきてしまう子がどのグループにもいたし、ワニの散歩では、一人で歩けない子もいて、予想以上に水の苦手な子が多かった。(10人) この様子から、どんどん進むのではなく、ゆっくりと学習を進めていくことにした。 またグループで練習をしようとしているが、どうしても、見ている子は、ノートに目がいき、練習している友達から目が離れていた。 3時間の内容は同じだが、顔をつけている秒数が少しでも長くなるように、チェック項目を『「ワニさんもぐって」の間つけていた。』「パッの時、顔を拭かなかった。」「パッの後すぐに続けてできた」と変えていった。 「お話水泳」のワニの散歩では、トンネルくぐりがあり、一人でできたかどうか自分でもわかりやすいので一気に「できた、もう少し」と友だちどうし励まし合いのムードが高まった。 1時間目の後、練習の前に、「ちゃんと友達を見る」こと、そのために「練習している友達の前を後ろ向きに歩く」ことを強く言ったので、友だちの様子を見ることはよくなっていった。勝手なことをする子がいる4班(まさお)と8班(りょう)は、うまく練習ができていなかったが、残りの班は、しっかりとできていた。感想文にも教え合った様子が書かれていた。 ・けんじを手伝った。けど、またけんじが、プールの水を飲んでもうた。けんじが今日一人でできた。けんじの手をつないだった。けんじは、嬉しかったと思うから、けんじはちょっと顔をつけられた。(しょう) ・今日一人でトンネルくぐれた。それから、ひかるとしょうが手つないでくれた。けんじががんばりやと言ってくれた。先生が手伝ってくれた。先生ががんばりやって言うてくれた。(けんじ) |
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(2)動物歩き (2時間/23・25日) この時間は、初めに、息を止めていることをどこで見るとよいか気づかせたいと、「調べてみよう@」の学習として「息が漏れたらどうなるか」をした。ようやく顔をつけられるようになった子は、息を吐くことができなかったが、友だちの様子を見て確かめていた。 次に、ワニのもぐりっこ競争で長く顔をつける練習と、動物歩きをした。 動物歩きは、プールフロアを沈めて、アザラシの散歩をした。初めは、顔をつけずにスタートし、2回目以降は顔をつけるようにした。できない子がいるかもしれないと思ったが、手をついて足を後ろに伸ばせない子は誰もいなかった。顔をつけられない子もいなかった。むしろ、前時までの立った歩行よりも体が安定するからか、「こっちの方が簡単」という声も聞かれた。 みんなが恐がらずにできていたので、2時間目の終わりに「浮く」ための学習アザラシの変身を入れてみた。どの程度、浮けるかと全部のグループを回った。すると、初めに顔をつけにくかった子の内3人がすぐにはできていなかった。ゆうこは、すぐにできるようになっていた。 できていない子がいるグループには、私が入って一緒に練習した。結局この日、15分ぐらいの間に全員浮け、(4人見学)「みんなミズスマシになれたね」と言って拍手した。しかし、この日の感想に「ミズスマシになれた」とは書いているものの「浮けてよかった」という感想はほとんどなく、「ミズスマシ=浮いた」とは考えていないことに気がついた。模倣遊びでミズスマシになりきって練習している1年生らしいと思った。 |
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(3)第2次 浮きの学習 (4時間/6月29・30日 7月2・6日) 前の時間、子どもたちが結びつけて考えていなかった「ミズスマシ=浮いた」ということを教え、あざらしの変身の復習を兼ね、浮いたときどんな感じがするか調べさせた。 2時間目は、やや深いところで(動物歩きの状態で底に手をつくと顔が出ないぐらいの深さ)カエルの変身を、3、4時間目は、普通の深さでの伏し浮き白クマの変身をした。 この学習で大切なことは「浮いた後の立ち方」で、アゴを上げ、同時に腕を下にかいて膝を曲げることである。カエルの変身で、これをしっかりマスターしておけば、白クマの変身でつまづくことはほとんどない。今回は、2班に一人できない子がいたので、私がつきっきりで指導したが、あとの子は、みんなグループの練習でできるようになっていた(やや斜め浮きの子が3人いた)。 そして最後に、鏡を使って目を開ける練習をした。子どもたちは、授業前にノートを見たときから楽しみにしていて、初めて見た水の中の自分の顔に興奮気味だった。特に手を貸すこともなく、全員の子が目を開けることができた。後で聞くと、初めて目を開けた子が7人もいた。 |
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(4)第3次 もぐる学習 (2時間 7月7日・9日) 全員が浮けたので、もぐる学習に入った。 はじめに、「調べてみようA」として、「プールの底にじっと座っていたらどうなるかな?」をした。このねらいは、人は水中では必ず浮いてくることに気がつくことだった。簡単に座っていられると思っていた子どもたちに、沈もうとしても浮かんでしまうことが体験できた。 次に「もぐる」でお宝取りとトンネルくぐりを一つずつしていった。お宝が取れない子には、もっと浅いところでするようにアドバイスをした。 浮けるようになってはいても、まだ十分に水になれていない子は、頭から潜れず、先ず膝を曲げてそれから頭を下にする。これでは頭の位置が、腰より下にはならず、深いところでは、お宝は取れない。トンネルくぐりは、さらに頭から潜ることが必要になる。 潜ることは、水への慣れ具合を見るもう一つの尺度でもある。 お話水泳では、前の時間の白クマの散歩に「お宝ゲット」を入れたものをした。個々では、沈んでから浮くまでじっとすることと、パッの後、顔を拭かずに息つぎをしてすぐに続けることをねらいにした。 |
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(5)第4次 力を抜いた浮きの学習 @いろいろな浮き(3時間13日14日16日) この日から、いろいろな浮きの学習に入った。大の字浮き・ダルマ浮き・ロケット浮き(所謂けのび)を1時間、スパーマン浮きとがっくり浮きを1時間した。 特に、スーパーマン浮きとがっくり浮きは、次の学年の息つぎにつながる大切な浮きだと捉えている。 今回は新しい試みとして、マットで勉強した「ねこちゃんがおこった」のフウとハアの姿勢で二つの浮きを説明した。 「がっくり浮きは、フウの姿勢でアゴを引き背中が浮いてくる。」と「スーパーマン浮きは、ハアの姿勢でアゴを上げて背中が下がる。」だ。しかしこれが悪く、がっくり浮きでは、お尻を突き出した姿勢が目だった。 そんな中で、4班のたけしは、「ちがうで、いつものミズスマシで、あご引くねん」とアドバイスをしており、ノートの絵でどんな浮き方かよくわかっていた。私は、各グループを回って、「みずすましでアゴを引く」と言い直していった。1番大事なところの説明で大失敗をしたが、たけしに助けられた。 いろいろな浮きで、がっくり浮きが難しかった。どこが難しかったかというと、背中があんまり上に上がらなかった。 授業後の感想文にしんいちがこう書いていた。そこで、クラスみんなに、この感想文を紹介した。そして、「しんいち君は背中が上がらなくて困ってるんだけど、自分は上がったよって感じた人いない?」と聞くと、7人の手が上がった。「どうしたら背中が上に上がったかな?教えてくれる?」と言うと「なんかなあ、力を抜いたら浮かんだ。」とけんじ。他にも二人「力を抜いたら浮かんだ」と言った。「息いっぱい吸ってやったら浮かんだ。」とゆうぞう。みつおは「背中に息いっぱい溜めてやったら浮かんだよ。」と言う。そして、たけしが「おへそ見るようにしたら背中が上にいった。」と言うと、すかさず、ひろみが「おへそ見たら、鼻に水が入って苦しくなるで。」と反論。他に何人かも、そうやそうやと、頷いている。わたしは、「たけしが言ったことよく思い出して。おへそをみるようにって言ってんで。おへそを見るとは言ってない。おへそを見たら鼻に水が入るから、見るようにやってみて。背中を丸くしないであごをひくってことを言うたんやで。」と説明した。他の意見を求めたがなさそうなので、この3つ、「力を抜く」「息をいっぱい吸う」「アゴを引く」を意識してやってみることにした。 3時間目は、1学期最後のプールなので、初めに少し練習の時間を入れ、それから中間の発表会をした。グループごとに、スーパーマン浮きとがっくり浮きの二つをした。教室に戻って、発表会のビデオを見てノートに○、△をつけていった。そして、「グループの練習を思い出すと」で、うまくなったこととグループみんなでうまく練習ができたかどうかを振り返らせた。 |
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A変身浮き(2時間/9月3日・7日) 二学期最初の授業は、一学期の復習として、スーパーマン浮きとがっくり浮きの練習をしてから、変身浮きに入った。久しぶりなので、浮けなくなった子がいるかと心配したが、そんな子はいなかった。 1学期の終わりに、がっくり浮きのできない子が多かった7班の様子を見たが、みんなできていた。教え合いもうまくなり、できていない子がいると頭をトントンとたたいて合図をすることもできてきた。 次に、変身浮き3種類をした。 【あ】がっくり浮き→大の字浮き(声かけ:がっくり浮き〜変身〜タッチ大の字浮き) 【い】大の字浮き→ダルマ浮き(大の字浮き〜変身〜タッチダルマ浮き) 【う】がっくり浮き→スーパーマン浮き(がっくり浮き〜変身〜タッチスーパーマン) 2時間目は、最後の練習として、2連続の変身浮きをした。「がっくり浮き→スーパーマン浮き→がっくり浮き」である。ゆっくりしていると、息が続かないので早めにタッチをするように言った。全体的に、スーパーマン浮きはよくできていたが、がっくり浮きは、あごの引き方が足りないように思えた。 後半のお話水泳は、白クマの変身3をした。これは、前回の内容に変身浮きを加えたものである。ポイントは、息つぎの時に顔を拭かないこと、腕をダルマ浮き以外は前に伸ばしていることにした。そして息つぎ以外は、顔をつけているように気をつけさせた。これまでの演技は、ぶつ切れの感があったが、少しは続けてできてきたように見えた。 (6)第5次 まとめ 最終日、まとめの発表会をした。前半は、「がっくり浮き→ウルトラマン→がっくり浮き」の連続変身浮きをグループごとに二人ずつ交代で発表した。 後半は、「白クマの冒険3」のお話水泳をグループごとに発表した。見ている人がお話を言い、4人が横一列に並んで演技することにした。4人の列がガタガタ になったグループもあったが、みんな演技することができた。 まとめとして、教室でビデオを見たあと、この日の感想の代わりに今までの勉強全体を思い出して感想を書かせた。「初めのころの自分を思い出して、今はどんなになったのか、友達はどうか、そんなことを書こう。」とアドバイスした。 |
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