「車いすバスケットボール」実践

2001年の11月のことでした。近隣の町から24台の車いすを借りてきて、2週間という限られた期間に、毎日車いすバスケットボールをやりました。その授業記録です。


1.実践のきっかけ・授業計画
2.車いすバスケットボール実践

  
1)オリエンテーション・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「車いすバスケットボールをしよう」その@
  2)車いすの操作に慣れる(車いすの操作)・・・・・「車いすバスケットボールをしよう」そのA
  3)車いすの操作に慣れる(ボールを使って)・・・・「車いすバスケットボールをしよう」そのB
  4)ショット調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「車いすバスケットボールをしよう」そのC
  5)試しのゲーム1(初めての試合) ・・・・・・・・・・・・「車いすバスケットボールをしよう」そのD
    試しのゲーム2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「車いすバスケットボールをしよう」そのE
  6)根木さんとの出会い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「車いすバスケットボールをしよう」そのF
  7)攻めの作戦づくり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「車いすバスケットボールをしよう」そのG
  8)作戦をゲームに生かす<研究授業>・・・・・・・ 「車いすバスケットボールをしよう」そのH
  
9)作戦をゲームに生かす・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「車いすバスケットボールをしよう」そのI
  
10)作戦をゲームに生かす(まとめの試合) ・・・・・ 「車いすバスケットボールをしよう」そのJ
3.実践のまとめ
  1)記録からわかること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「車いすバスケットボールをしよう」そのK
  2)感想からわかること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「車いすバスケットボールをしよう」そのL
  3)実践を終えて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「車いすバスケットボールをしよう」そのM
  
4)実践をふり返ると
   −体育の授業としての車いすバスケットボール 
   −障害児教育実践としての車いすバスケットボール


1.実践のきっかけ

1.車いすバスケットボールを教わった
 去年の夏休みに、車いすバスケットボールを教えてもらいました。講師先生は根木慎志さんという方です。シドニーパラリンピックで日本チームのキャプテンをされていた方で、橿原市在住です。2学期に輪番制で回ってくる町の同和の研究授業があり、「車いすバスケットボール」を題材に少し違った視点での授業を提起してみようと思いました。その想いは以下に記すとおりですが、まず、教える側が最低「車いすバスケットボール」を知っていなければなりません。幸運にも、教えてもらえる機会に恵まれ、田原本のリハビリセンターで実技を受けてきました。

2.プラスの出会いを求めて〜思うことをまとめてみたら〜
 長野パラリンピック前後から、障がい者の姿は「健常者が手を差しのべる社会的弱者」ではなく、「より能動的な社会参加を目指す障がい者」として定着しつつあります。それは、マスコミの報道、障がい者の雑誌の発刊、書籍の発行などに負う部分が多く、障がい者の生活がより一層身近なものに感じられるようになったからだと言えるでしょう。また、健常者から障がい者スポーツへの参加という現象も起こっています。例えば、車いすバスケットボールは、障がい者のために考えられたスポーツですが、障がいを持たない人も車いすに乗ってプレイすると、バスケットボールにはないおもしろさが備わっていることがわかります。今やバスケットボールを水で薄めた車いすバスケットボールではなく、「車いすバスケットボール」という一つのスポーツとして運動文化の継承・発展が見られ、障がいのあるなしに関係なく行われていることには注目されます。このように、従前の障がい者観にも変化が見られます。
 しかし、一方、教育現場に目を向けるとどうでしょうか。これまでの障がい児(者)教育にかかわる実践の多くは、例えば、車いすの体験やアイマスク体験など、生活上の不自由さを知り、障がいを持つ人の思いや願いに寄り添うことを主なねらいとされてきました。もちろんその様な体験は大切であり、経験して初めて多くの矛盾に気づかされる(バリアフリーの発想)のですが、そこでは、障がい者のしんどさだけが誇張され、社会的弱者という面のみが強調されてきました。子どもたちにはそれらの経験から、「障がい者にはこんなにも苦労があるのだ。こんなに住みにくい世の中だ。」と憤りの気持ちや反社会的な視点を持たせたり、自分の裡にある差別性に気づかせたりします。中には、教師の思惑を子どもに代弁させているような実践もあります。(これはこれまでの同和教育でよしとされてきた告発型の授業でしょう。)「障がいとプラスイメージの出会い」という言葉を最近よく聞きますが、このような実践からどうしてプラスイメージの出会いができるのでしょう?「考えていることと、やってることちゃうで。」という疑問をずっと抱いていたのでした。社会の変化とともに、実践においても、不自由さや不便さを共有する実践から抜け出すことが必要だと感じ、そこで、「車いすバスケットボール」を体育の教材として取り上げたわけです。(もちろん、アイマスク体験やバリアフリーチェックなどの体験を否定するのではありません。同じウエイトで扱うことの必要性を感じているのです。)


3.車いすバスケットボールの教材価値
 車いすバスケットボールの教材価値として、次のような利点が挙げられます。
@子どもたちにとっては初めての経験であるので技能差のない段階から実践がスタートできること
Aプレイ空間が瞬時に目まぐるしく変わってしまうバスケットボールと比べて、ゲームの動きがゆっくりしているために、空間の認識がしやすく、バスケットボールの重要な要素である、開いた空間への移動→ショットという技能が身に付きやすいこと
Bドリブルだけで抜いていくことが困難なので、どうしてもパスの必然性が生まれること
C車いすという道具を使うので、ディフェンスが強化されること

などが挙げられます。このように子どもたちに付けさせたいバスケットボールに必要な基礎技能が、バスケットボールに比べて車いすバスケットボールの方が優れていると言えるでしょう。
 車いすバスケットボールはバスケットボールと同様、味方のプレイヤーと連携しながら、ショットできる空間(重要空間)に防御を破ってノーマークをつくり、ショットして得点することを攻撃の目的としています。よって、その一番の面白さは、何と言ってもコンビネーションによるパス→ショットにあると考えます。それを巡っての作戦づくりを課題とし、作戦が有効であるかどうかの実験などを通し、成功できる作戦パターンを完成させます。また、子どもたちは、本実践に入る前に、バスケットボールの学習を終えているので、バスケットボールとの対比から、共通点や相違点についても目を向けさせたいと思います。
 以上の技能を身につけるためには、単なる車いす体験に終わらせないことを第一に考えています。実践の中盤では、車いすバスケットボール選手の根木慎志さんを招いて、自分たちのゲームを見てもらいたくさんのアドバイスを頂きました。

4.授業計画(全12時間)
第一次 オリエンテーション(1時間)   
 ・車いすバスケットボールについてのアンケート(子どもの意識調査)
 ・車いすバスケットボールの試合のVTRを見て、知りたいことや感想をまとめる。
第二次 車いすの操作に慣れる(2時間)  
・車いすの基本的な操作方法を覚える。  
・ボールを持った簡単なゲームを行う。  
第三次 車いすバスケットボールの習熟(8時間) 
 ・ショット調査
 ・ためしのゲーム「4:4」
   根木さんにゲームを見てもらいチームの課題を知る
 ・「3:2」野球型バスケットボール            
   攻めの作戦づくり→実験→成功パターンづくりへ ←ここが研究授業になる      
 ・たしかめのゲーム「4:4」
第4次 学習のまとめ(1時間)
 ・車いすバスケットボールの学習のまとめをする。


『車いすバスケットボールをしよう』その@ 11/2(金)

2.車いすバスケットボール実践

1.オリエンテーション

車いすバスケットボールの学習で学んでほしいと思うことを伝えました。
 ・車いすの操作が上手になり、車いすスケットボールのゲームを楽しみましょう。
 ・グループの問題点は何なのか?ゲームの分析をしっかりして、勝てる作戦作りをしましょう。
 ・グループのメンバーの動きに積極的にアドバイスできるようにしましょう。 
というぐあいに、学んでほしいことは、バスケットボールと全く同じ。車いすを使っていることを除けば、学習する内容は同じなのです。
 まず、子どもたちの意識調査をしました。
Q 車いすバスケットボールを知っていますか?(見たことはありますか)<29人中> 
◎知らない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19名 
◎知っている(見たことがある) ・・・・・・・・・・・・10名
・ニュースで見た。
・12チャンネルの障がい者の番組で見た。
・パラリンピックで見た。
・昔のドラマの再放送で見た(キンキキッズが出てた)
というふうに知らない人の方が多かったようです。そこで、車いすバスケットボールのほんの一分ほどのVTRを見てもらって、率直な感想や知りたいことなどを書いてもらいました。
 
<感想・知りたいことや疑問点>
・車いすでドリブルするということになったら、すごく力がいるんじゃないかな。
・子どもでもできるのか?少し心配になった。
・ドリブルができないと思っていたけど、すごく上手にしていて、おどろいた。根木さんはどのような障害を持っていて、車いすにのっているのか知りたいです。試合の時にぶつかって、どうして起きあがれなかったのかも知りたい。
・車いすの車輪がややななめになっていたから、ふつうの車いすとバスケ用の車いすとのちがいが知りたいです。テレビで見ただけじゃあわからないから、本物を見てみたいです。
・トラベリングの三歩はどのように判断するのだろう。バスケットとどんなにルールがちがうのか知りたいし、一回やってみたい。
・車いすバスケットボールだと、トラベリングとかダブルドリブルとかはないのだろうか。
・VTRではすごくこぐのが慣れていたようだったけど、初めての人はとまどってしまうと思う。車いすをこぐときに、右手だけでこぐと、右に曲がってしまいそう。片手でこいだらうでにすごく力がいると思う。
・車いすバスケットのときには、一人一人につきそいがいて、その人がこけたりしたときなど助けるのか、それともだれでもいいから助けてあげるのかを知りたい。
・ボールを持ったまま車いすを動かしてシュートをしたりしたら反則になるのだろうか。
・ドリブルの仕方やシュートの仕方は、車いすバスケットはふつうのバスケットよりも難しいと思った。車いすバスケットボールは仲間にこけたりしたときに助けてあげたり、助けてもらいながら共に友情を深めていくと思った。
・相手に車いすをこかされてもファウルにはならないのですか。
・片方の手でドリブルをして、片方で車いすを動かす。そして、両方の手でパスをしながら動いていて、すごくうまいんだと思いました。今度根木さんが学校に来てバスケットをおしえてくれるのがすごく楽しみです。
・シュートをするときにゴールリングが高くなるので、ショット成功率が元々悪いチームなのに、さらに悪くなりそう。
 

『車いすバスケットボールをしよう』そのA 11/5(月) 

2.車いすの操作に慣れる  
 午前中に学年の先生が、文化福祉センターや田原本のリハビリセンターなどで車いすを借りてきてくださいました。合計17台(最終的には24台借りる予定)。2週間も長い時間にわたって借りることができた。やっと実践ができる!!(感激)
 車いすもそろったところで、初めての授業。車いすの操作を覚えた後で簡単なゲームをしました。
<車いすに慣れよう>
@車いすのこぎ方、とまり方。
A車いすをこいで旗立て台をまわる。
 右を押して左を引くと左回転する。(右回転はその反対)
B車いすリレー
C車いすリレー(旗立台にタッチして、 後ろ向きにこいでもどる。)
D車いす鬼ごっこ (鬼が次々増えていきます。)
Eインベーダーゲーム(敵のいないところに動く)
 中でも、車いすを後ろ向きに動かすのは難しいようで、なかなかまっすぐ後ろに動いてくれません。左右の手の力の入れ方がびみょうにちがうのでしょうね。
一時間があっと言う間に過ぎて、もっとやりたいと言う声が多かったです。


車いすをこぐ

車いすリレー

車いす鬼ごっこ
 
<子どもの感想から>
☆車いすを動かすのは簡単だと思っていたけど、かなり難しかった。前に行くのは簡単だったけど、後ろに下がるのは難しかった。それと、右にカーブするのも、人からにげるのも難しかった。
☆今日は初めて車いすを一人で乗った。全然動かし方が分からなかったので、一人取り残されていた。けど、鬼ごっこの時には動かし方が身に付いてきた。これから、車いすバスケットボールをするから、車いすをうまく動かしてうまくなりたいです。
☆車いすに乗ったのは四年生の時が初めてで、今回が二回目でした。車いすは思ったより難しく、自分が行きたい方向になかなか行けなかったです。最初のうちは難しかったけど、授業でやったインベーダーゲームの時には、自分の思った方向へ進んだので、とってもうれしかったです。早く車いすバスケットボールをやってみたいです。 

☆こんなに難しい車いすを簡単に乗って行動したり、車いすバスケットをしようと思ったら、ふつうのバスケットより訓練が必要だなと思った。それに、車いすに乗ったままショットをしようとしても、肩の力が強くないと無理だと思ったし、ショットして入る確率が低くなると思った。
☆車いすに乗って後ろにもどると、少し横に車いすが曲がって、後ろにもどるのは難しかったです。簡単だったことは、一回転して回ることです。ぼくは、車いすのことについてもっと知っていきたいなと思いました。 
☆私は4年のときに車いすに乗ったことがあるけど、今日はリレーなどもして、だいぶ車いすに慣れたと思う。今は、車いすを動かすだけで精一杯で、バスケットで車いすでするのは、かなり難しいんじゃないなと思った。車いすは両手でこがないと動きにくいから、バスケットをするとき、ドリブルはすごくやりにくいと思った。

☆今日初めて車いすを使ってゲームなどをしたけど、一番難しかったのは、後ろに下がることです。上手にいかなくて、くるっと一回転してしまいました。ゲームは楽しかったけど、スペースが決められていたので、思ったように動けませんでした。
☆最初、「車いすなんか乗れるわ。」と思っていたけど、乗ってみると、すごく難しかった。特に、後ろに行くのと回転するのが難しかった。こんな調子でバスケットなんてできるのかどうか心配です。
☆今日、車いすを動かした。思っていたほど動かず、動かしにくかった。自分の行きたい方向に行けなかった。特に、バックが難しかった。今度プロの人が来るから、ドリブルの仕方のコツなども聞きたいです。今度は、ボールを持って車いすに乗るから、早く明日になってほしいです。
☆車いすを使うのはぼくにとって初めてだった。でも、すぐに慣れた。車いすで後ろ向きに行くのは難しかった。両側に同じぐらいの力を入れているつもりだったのに、どっちかに多くの力が加わって、回ったりしていた。最後にインベーダーゲームをして、五人ぬくのは難しいと思った。ぼくたちの班は三人がゴールして三点だった。今日の体育はとてもおもしろかった。  
☆前まで行ってから、バックするのが難しかった。ぼくは行きすぎたので、もどりました。ぼくは失敗をしすぎて、曲がるのが多すぎました。そして、やっと行けました。それから、おにごっこをして、はじめはM君にタッチしました。そして、M君が他のみんなにいっぱいタッチをしていました。それからは、ぼくはタッチをしたかどうかはよく分かりませんでした。また、車いすで遊んでみたいです。

manzo)子どもの反応はとてもいい。学級には自閉的傾向の子どもがいて、バスケットボールだったらほどんどゲームに参加できない状態だったが、車いすのリレーではとても速く車いすをこいで、参加できているのが嬉しい。授業時間の最後には勢いを落とさずに曲れるようになってきた。

『車いすバスケットボールをしよう』そのB 11/6(火) 

3.車いすの操作に慣れる(ボールを持って)   
 今日の授業では、ボールを持った車いすの操作や、二人でのパスの練習を行いました。
<ボールを持って車いすに慣れよう>  
 @車いすリレー (ボールを足にのせて)
 Aトラベリングのお話
 B2プッシュでボールをパス (一人が一緒に走ってボールをもらいます。ボールを受け取ったら、2プッシュでパスを出します。)
 C車いすで転がったボールを拾う
 Dドリブルの練習
 E二人組で、パスをしながら移動。
 
◎トラベリングについて
 車いすバスケットボールでは、「トラベリング」とかはあるのかどうか?ということを何人かが感想に書いていました。「一般ルール」では、ボールを持ったまま、三歩以上歩いたり走ったりするとトラベリンクという反則になりますが、車いすバスケットボールのルールでは、ボールを保持してから、車いすを3回こぐと「3プッシュ」(プッシングヴァイオレィーション)という反則になります。
◎ダブルドリブルについて
 一般ルールでは、ドリブルのあとにもう一度ドリブルすると「ダブルドリブル」ですが、車いすバスケットボールのルールでは、3プッシュに気をつけてさえいれば何回持ち直してドリブルをしても反則になりません。
※『障がいのある人のスポーツガイド/藤原進一郎・田中行信著・汐文社』には3ページだけど絵入りで解説してあります。 
 
 みんながバスケットボールの試合を実際に行うときには、ドリブルよりもひざの上にボールをのせて移動してパスすることが多くなると思います。そこで、今回は2プッシュでパスという方法を中心に行いました。Eでは、パスをしたら車いすをこぐのを忘れて、止まってしまったりする場面も見かけましたが、最後の方では、車いすの勢いを止めずにパスを出すことができる人も出てきました。二人の息を合わせて、上手にパスを出せている人も多かったです。
 また、みんなはCが気に入ったようです。車いすを利用してボールを拾い上げる練習を何度も繰り返していました。


ボールをパス

車輪にボールを押し当てて拾う

2人組でのパス

<子どもの感想から>
☆ボールが落ちているとき、スピードを落とさずにボールをとる取り方を見て、こんな取り方を考えた人はすごいなと思いました。ドリブルは、難しいとは思っていたけど、実際はもっと難しくて、止まってだとできるけど、動きながらするとボールが転がっていってうまくできませんでした。もっと練習して、まともにドリブルができるようになりたいです。
☆車いすに乗ってドリブルをしたとき、自分の体からボールが離れていって、ドリブルが続かなかった。そして、転がったボールをとるやり方を教えてもらいました。それは、回っているタイヤにボールを押しつけると、タイヤと一緒にボールが上がってくると言うことでした。最初は全然できなかったけど、やってるうちにやっとできました。 

☆車いすに乗ってドリブルするとどうしても曲がるので難しかった。パスするときも曲がったりするし、相手に合わせないとうまくできないので難しかった。でも、転がったボールを取りに行くとき、車輪をうまく使ってやるとできたので、コツさえつかめばできるもんだなと思った。ボールを持って、「1・2」とこいで3回目をこいだらトラベリングという反則なので覚えやすいと思った。
☆バスは思ったより簡単だった。でも、やっぱりドリブルは難しかった。ドリブル自体は難しくないけど、ドリブルをしながら前へ進むのはとても難しかった。トラベリングは三回まわしたらトラベリングになると聞いたけど、車いすバスケットのルールもバスケットと同じように作られていることが分かった。その他、ボールを取るときは、車いすの特徴をすごくうまく使っているなと思った。 

☆車いすの車輪にボールをおさえつけてボールを取るときに、タイヤでボールをふんでしまって取れないと言うこともありました。車いすに乗って、ボールをつくのは難しかったです。今日は、車いすの学習の二日目で、速く進めるようになり、カーブもうまくなりました。早く車いすで試合をやってみたいです。 
☆車いすに乗りながらドリブルするのは難しかった。特に進みながらドリブルするのは余計に難しい。でもボール拾うのは「難しそう」と思っていたけど、意外に簡単で楽しかったです。車輪を使ってボールを取るなんて考えた人がすごいと思いました。 
☆車いすに乗りながらボールをドリブルするのがとても難しかった。片手で車いすをこいだらまっすぐ動かないし、ボールをドリブルしたら、ボールに気をとられてしまって、車いすをこぐのを忘れるから、試合中は、あまりドリブルをしない方がいいと思った。パスは、今日の場合、じゃまをする人がいなかったから、うまくできたんじゃないかなと思った。
☆車いすのバスケットボールで、バスは相手に合わせて動かないといけないので難しかった。ドリブルも片方の手だけで車いすをこがないといけないので、難しかった。 
☆今日は体育があって、最初にボールをひざの上にのせて走りました。ぼくは、何か前より速くなった気がしました。次はドリブルの練習で、その場でドリブルするのはうまくいけました。でも、前に進みながらドリブルするのはできませんでした。そして、ゴロのボールを取る練習では、けっこううまくとれました。それから、ペアの人とパスの練習でしたが、これもうまくいけました。ショット練習を早くしたいです。 
☆今日は、車いすでパスの練習をした。パスをするとき、思うように車いすが前に行かず、どうしても失敗してしまった。練習してうまくできるようになりたいです。 

manzo)ボールを転がして車輪に当てると、ボールがタイヤの回転によって上がってくる。これが見ていてとってもカッコイイみたいで、私がやっても歓声がわいた。車いすバスケットボール独自の技術でしょう。この日は、ドリブルよりも、ツープッシュからのパスに時間を割いた。と言うのも、きっと試合場面ではドリブルはほとんど使われないと思うからだ。パスを出したら車いすをこぐのを忘れてしまい、勢いを殺さずにパスをだすことがなかなか難しいようだった。

『車いすバスケットボールをしよう』そのC 11/7(水)  

4.ショット調査 
 いよいよバスケットボールの授業が始まりました。今日は、バスケットボールの時と同じショット調査を行いました。
@ゴール下から、1mごとに4mまでポイ ントをつけ、その場からショットする。
A各ポイントから一人5本ずつのショット をする。(1人75本)
 ショットするときにどのような投げ方がよいのか、ショットのポイントも考えてショットをしてもらいました。
始まると、いきなり、「4mは無理」ということがわかりました。遠くて届きません。中には、リングに当たる人もいましたが、ショットが入らないので、4mからのショットはやめになりました。

 授業時間だけではショット調査ができずに、終わらなかったグループは、昼休み時間にも体育館ショット調査を行いました。一人75本のショットを行いました。合計14%という成功率の低さ。(でも、バスケットボールのときは、18%でしたが)なかなか入らないと言うことが分かったようです。 ショットは1m、2mの所からは、入るのですが、3mではほとんど入らなくなってしまいます。1mと2mに限って見ると、入りやすい場所は、中央の1mの所。反対に、入りにくい場所はDの2mとなりました。
 重要空間は下の図のように決定しました。バスケットボールと比べて、重要空間がゴール前に集中しています。2m以内のショットをどう成功させるのかが、これからの学習課題となります。
1m 2m 3m 4m
A 25(17) 27(18) 8(5)
B 30(21) 29(20) 4(2)
44(30) 29(20) 5(3)
D 38(26) 18(12) 3(2)
E 30(21) 27(18) 6(4)
167
/725
=23%
125
/725
=17%
26
/725
=4%
ムリ
318/2175=14%
☆わかったこと(Gノートから)
・ゴールの1m〜2mぐらいからシュートしないと入らない。(3G)
・車いすでは遠い所やったらとどかなくて、コントロールがうまくできない。(6G)
・正面の一番近い所が入りやすかった。 (4G)
・4mは不可能。一番近い1mが入りやすい。ゴールの少し向こうをねらうといい。(1G)



4mは全く届かない

投げ方にも工夫が

リングのすぐ近くが入りやすい

<子どもの感想から>
☆車いすに乗って投げると、ゴールのリングが高くなったから、入れにくかったです。私がわかったのは、近すぎても遠すぎても入りにくいと言うことです。1mの所では、少し入ったけど、リングに当たってはねかえることが多かったです。 
☆車いすでショットして成功させるのはとても難しかったです。近すぎるとねらいが定めにくいし、遠いと届かないからです。近いときは力も入らないので、ときどき入ったけど、車いすに乗らないときの方が私はかんたんにできます。私はシュート成功率が15%だったので、たぶんゲーム中入ることは、まぐれで入ること以外ないと思います。でも、パスとかでがんばりたいです。
☆車いすのバスケットは、やっぱり普通のバスケットと同じで近い方がシュートが入りやすかった。車いすに乗っているとあまりボールを遠くに飛ばせないとくこともわかった。また、車いすの場合、位置はあまり関係なく、距離だけに関係があると思った。
☆車いすでのシュートは上半身が使えないから、コントロールがしにくかった。何より遠くから投げられなかった。投げるときは、かごを直接ねらうよりも、黒いわくをねらった方が入ると思った。最初は、ドリブルの方が簡単だと思っていたけど、シュートの方が簡単だった。もっと練習して、シュートを確実に入れられるようにしたい。
☆今日、ショット練習をした。ぼくは1m地点がよくはいると思っていたが、結果的には2mがよく入るということがわかった。ぼくは、ドリブルが一番難しいと思っていたが、今日練習して、シュートがむずかしいんだなあということがわかった。
☆今日はショットの練習をして、75本中25本入った。ぼくの一番入った所は、Aの2mだった。今度いつショット練習するのか楽しみです。早くルールを覚えて試合をたくさんしたいです。
☆車いすに乗りながらショットすると、普通にやるより腕の力がいることがわかった。自分ではちゃんとねらっているつもりだけど、3mもはなれると、なかなかショットが決まらなかった。車いすバスケットをやるときも、今日の結果をうまく利用したいです。
☆前にビデオで見たときはすごく難しそうと思っていたけど、実際にやってみたら、思ったよりは難しくなかった。最初にバスケットボールをやったときよりも、シュート成功率はよかったので、シュートははじめよりはうまくなっていると思った。やっぱり、パスやシュートよりもドリブルが一番難しいということがわかった。  
☆ショット練習を近くからやってみたら、けっこう入ったけど、遠いところからやると、コントロールがつかず、全然入らない。ぼくは全部で30本入れたけど、遠いところからは6本しか入らなかった。ショットするときは近いところから入れるといいなと思った。             
☆このショット練習で、半分以上入れられなかったのが残念だった。車いすに乗ってショットするのは、勢いがないからとどかないこともある。3mの所からのショットは全然入らない。だから、試合をするときは、近くから打ちたいです。
☆車いすに乗ってショットすると、手の力がぬけて全然入らなかった。私の場合は、DとEの1mが入りやすかった。車いすバスケットでショットするときは、できるだけゴール近くに行って、ショットすると、入る確率が高く、ゴールの少し向こうをねらうといいということがわかった。
☆今日はショット調査だったから、普通のバスケットの調査といっしょだと思った。班の人はみんな成功率がよかった。ショットをするとき車いすが動いてしまうのがやりにくかった。試合の時は、真ん中の方にボールを集めたい。

manzo)車いすからのショットは難しかったようです。ショットするときに車いすが動くのでふんばることができない。上半身だけで投げるのは子どもにとっては困難だったようです。しかし、重要空間が中央に集中するということは、子どもにとっては無謀なショットが減るわけで、ゴール下へのパス→ショットが課題となると考えていました。
    

『車いすバスケットボールをしよう』そのD 11/8(木)  

5.試しのゲーム1(初めての試合)
 初めての試合をおこないました。試合の前にルールを確認しました。トラベリングのこと。ダブルドリブルはかまわないこと。相手チームの持っているボールを取ってもいいことなどです。そして、試合を始めるのですが、「初めはジャンプボールするの?」ということがありました。

◎タップオフ
 バスケットボールのルールでは、試合は「ジャンプボール」で始まりますが、車いすバスケットボールでも同じで名前は、「タップオフ」というそうです。ただ、ちがう所もあって、ゲーム中に両チームの選手がボールを一緒に持った場合、バスケットボールのルールではジャンプボールになりますが、車いすバスケットボールでは、コートの外からのスローインになります。このスローインは、最初の「タップオフ」で、ボールをとることができなかったチームから行い、それ以降は、交互になるようです。

 ルールを確認して4分間の試合が始まりました。車いすの操作とボールをパスすることの一連の動きがなかなかできずにみんな苦労していたようです。ツープッシュのあとパスするのですが、車いすを止めるのを忘れてそのままかべにぶつかる人もいました。ツープッシュの後に止めることはトラベリングにはなあらないのに、それを忘れてしまっていました。パスしたボールを取れずに、コートの外に転がり出ることが何度もあり、車いすの操作を上達することが大切でしょう。しかし、パスが上手に通ると、確実にショットにつながり、ゴールできたチームもありました。
もう一度試しのゲームをおこないます。


<初めてのゲームの感想から>

☆シュートチャンスはあったんだけど、ボールがゴールにとどかなかった。もう少しボールをとどかしたら入ると思う。それと、ボールを持って車いすを動かすと、全然進まず、3回目をこぎそうになった。
☆車いすバスケットはバスケットよりもお動きがおそいから、ボールに追いつけず外に出ることが多かった。シュート成功率が悪いのに、シュート機会も少なかったので、やっぱり一点も取れなかった。
☆車いすバスケットの試合では、止まってショットするのは確率が高いけど、二回こいでショットするのはショットの確率が低くなる。ドリブルは全然進まなくて、ただついているだけだった。だから、ボールをひざにおいて2回こぐのを優先して、そしてパスしてショットするという風にすると勝てると思う。
☆ボールをひざの上に置きながら、1、2回こいでいる間に相手にボールを取られるので、取られないように、どんな工夫をすればいいのか考えたい。それと、速くこがないといけないと思った。
☆初めて車いすバスケをした。全然活躍できなくて残念でした。分かったことは、2プッシュなので少し大変だったこと。あまり速く動けないので、パスを失敗したらボールをとるのが大変なことです。ころがったとき習ったやり方で取りたくてもなかなか取れないので、パスをすることが大事だと思いました。
☆思ったより自分のボールをさわる機会が少なかった。ショットが難しかった。ほかのひとが周りにいたからねらいにくかった。なるべくゴール前にいよう。   
☆初めて車いすバスケットの試合をしてわかったことは、ドリブルがあまりできないことです。それと、思うように車いすが動いてくれなかったことです。ボールを持っていたら、ブレーキをかけるの忘れたりして、ショートできなかった。
☆車いすバスケットを初めてして、味方にボールをするときに力が足りなくて、パスする前に相手に取られてしまった。車いすで動いた後にショットすると、ねらいにくかったけど、一回ショットして入ったのでうれしかった。
☆車いすバスケットではゴール近くにボールが行くことが少なかった。バスがうまくできなかったら意味がないということが分かった。パスを正確にすることが大事。

manzo)思うように車いすの操作ができず、パスを失敗したらすぐに拾いに行けない。それで、コートの外に出てしまうことが多かった。ドリブルが思うようにできないことから、予想していたようにパス中心のゲームになった。ショット調査の結果が生きており2m以内でのショットが守られている。トラベリングを強調しすぎたのか、それを守ることに必死になって、「イチー、ニー、パス」と言いながら移動する子どももいた。


『車いすバスケットボールをしよう』そのE 11/9(金)  

6.試しのゲーム2

初めての試合では、うまくいかない所が多かったようで、
・ボールが上手にとれない
・そのためボールがコートの外に出てしまう
・ドリブルよりパスの方が確実
・ショットが決まらない

など、予想した以上に難しかったようです。そのために、金曜日の試合では、「パスを確実にする」とかをめあてにしたチームが多かったようです。ゲームは、ショットがなかなか決まらないので、引き分けに終わる試合が多く、少ないショットチャンスに確実にゴールしたチームが勝っていました。車いすの操作に慣れることと、ショットの成功率を上げることがこれから目標になるでしょう。

<子どもの感想から>
☆今日の2回目の試合では、ボールを持ったら相手が取りに来るので、素早くボールをパスしないといけないので難しかった。また、ショット成功率が低いので、シュート練習をして高くしたいと思った。ショットするときに、止まった方がよくはいることがよくわかった。
☆今日は、2回目の試合だったから、車いすにも、試合にも慣れたので、どういう風に動いて、どこで待っていたらいいかもだんだん分かってきた。でも、ショットを何本も打ったけど、結局一本も入らなかったのがくやしかった。月曜日は根木さんにいろんなことを教えてもらって、自分にプラスになるように、根木さんのプレイを見て学びたいです。
☆昨日の車いすバスケットとちがって、ボールは外に出にくくなりました。昨日は、3対3で、あまりバスなどがしにくかったけど、今日は4人でやると、バスなどがやりやすくなりました。ぼくは、ショットをうっても、なかなか入らないのは、遠くからうつからだと思う。
☆味方にボールをパスするとき力が足りなくて、相手に取られてしまった。車いすをずっとこいでいると、肩が痛くなった。車いすバスケットしている人は肩は痛くならないのだろうか。
☆今日の試合ではバスが続くようになったのがわかりました。バスがつながるようになってよかったです。もっとショット練習をしてショット成功率をあげたい。 
☆今日も、車いすバスケットボールの試合をした。ぼくは、確実に決めれず、4本中1本しか入らなかった。でも、試合に勝ててよかったです。もっと練習して、4本中、4本入れれるようにがんばりたいです。
☆今日2回目の車いすバスケットの試合をして、前よりショット数が多くなったのでよかったです。でも、一人がゴール前にいても、その人が入れてくれないと負けてしまうので、それを考えて作戦を立てようと思います。
☆今日の試合も引き分けでした。ふつうのバスケットでも1回も勝っていないので、車いすバスケットでは勝ちたい。N君がショットがうまいので、もっとボールをN君に渡して、点数を入れたい。
☆やっぱり今日も1点も取れなかったので、負けと引き分けの試合だった。今日は、ショット回数もかなりふえて、6本になった。でも、1本も入らなかった。他のチームは3点も取っている所もあるのに、この班は1点も取れないのだから負けて当たり前で、引き分けでラッキーだったと思う。1点だけじゃ勝てないかもしれないのに、1点も取れないのじゃこれからもずっと負けていくと思う。
☆今日の試合でも分かったように、バスが中心の試合なので、ちゃんとバスがもらえる位置に行かないと相手にボールがとられてしまい、パス失敗になってしまった。だからこそ、ちゃんと作戦を立て、だれがどこにいとくかを決めないと、勝つことができないということがわかりました。
☆車いすバスケットでは、ドリブルが難しいために、パスを中心にして攻めなくては行けないけど、ふつうのバスケットボールとはちがって、少しずれると、ミスしてしまうので、正確にしなければいけないということがわかった。今日ショットが全然入らなかったのは、ゴールの前にいてバスをもらうと、いちいち方向転換をしなければいけないからだと思った。ただでさえチャンスが少ないので、もっとショットを正確にしたい。
☆今日はボールがいっぱいまわってきてよかった。けど。一回も勝ったことはなかったから勝ちたい。ショットがなかなか入らないから難しいと思った。

manzo)一回目の試合と比べると、それぞれのチームで大まかな作戦を立てたようで(これまでは作戦の指示はしていない)、ゴール下でパスをもらう者を決めているチームが多かった。とにかくパスをしなければ得点につながらないので、うまくパスをつないでボールを進めることに心がけていた。ゴール下でパスをもらえても、ショットが成功しない。確かに、ショットするときはたいてい車いすが動いているのでショットがしにくく、また、子どもによってはゴールが高い子どももいて届かない。確実なショットが勝ちにつながるということがこのゲームでわかったようだ。

『車いすバスケットボールをしよう』そのF 11/12(月) 

7.根木慎志さんとの出会い
 根木さんはシドニーパラリンピックの車いすバスケットボール日本代表選手でチームのキャプテンをされていました。オリンピック選手と一緒に車いすバスケットボールができると言うことでのですから、子どもたちはとても楽しみにしていました。子どもたちは、まだまだ不十分だけど、車いすバスケットボールの試合を見てもらえるということもあり朝からとてもはりきっていました。その根木慎志さんと2時間目から5時間目まで、ほぼ一日を一緒に過ごすことができました。給食も一緒に食べたし、休み時間も車いすバスケットボールをして楽しみました。

◎根木さんのお話(2時間目)
 シドニーパラリンピックに出場したことを中心に、学年でお話を聞きました。どのような大会で、どんな種目があったのか、選手村でのことなど、全く知らない話をみんなは真剣に聞いていました。中でも、選手村の中を行き来するバスの話は、興味深かったです。バスが停留所に着くと、車高を下げて、スロープが出てくるそうです。階段のあるバスではないのです。バスの中は三分の二がいすがなく、座席は後ろの三分の一の所にかためられてあります。これらは、車いすの人が不自由なく使えるように設計されてあります。つくるときに初めから全ての人のことを考えた設計が大事であって、日本のこれからのバスも全てがそうなっていくだろうと話されていました。
 たくさんの貴重なお話を聞けた一時間でした。

◎授業を見てもらう(3時間目)
 車いすバスケットボールの授業を見てもらいました。まず、みんなが分からなかったドリブルの方法やショットについて、そのやり方などを教えてもらいました。
ショット練習をした後に、グループごとに分かれて試合をしました。ゲームが終わるごとに根木さんからアドバイスをもらいました。

◎根木さんとの交流会(5時間目)
 実行委員が企画してくれた、グループ対抗のゲームを行いました。車いすのリレーやドリブル競争、ショット競争など、根木さんにも入ってもらって、ゲームを楽しみました。最後は、運動会でおどったエイサー「ミルクムナリ」を根木さんに見てもらいました。

<子どもの感想から>
やっぱり根木さんの車いすを見るとタイヤが外にそりかえっていた。それを見て、ドリブルがやりにくいんじゃないかと思った。でも、根木さんはらくらく動かしていたので、すごいなと思った。根木さんから、ショットが一番入りやすい所を教えてもらった。それは、板の所にある黒いふちのところをねらうことでした。それと、ショットでもいろいろなショットの仕方があることを教えてもらいました。バックショットや片手、両手でショットしたりできることでした。私はショット練習のときなどに、いろいろなショットをしたいと思いました。 
根木さんの話を聞いて、オーストラリアにある選手村に行ってみたくなった。オーストラリアの選手村にあるバスは、他の所よりも進んでいるのではないかな。ぼくも、根木さんみたいにうまくなりたい。もっとショットの成功率をあげたり、味方に確実にパスをすることだと思う。
☆根木さんがパラリンピックの選手村の様子や、他の国の人などの話しを聞いていた。体育館の8倍ぐらいの大きさの食堂があったと聞いてびっくりしました。他にも、障害者ができるように、例えば、柔道なら目の見えない人は最初から組んでやるとか、選手村のバスも車いすでも乗れるようになっていたりしていた。もっと車いすバスケットボールの話を聞きたかったです。
☆根木さんが登場したとき、なんか少しこわそうだなと思ったけど、話しているとおもしろい話をしていたので、すごくおもしろい人だと思った。シドニーパラリンピックの話や、選手村の話をしてくれたけど、めったに聞けない話をいっぱい聞くことができた。 根木さんの車いすを見たとき、なんであんなにタイヤがななめなんだろう?どうして、あちこちにひもがあるんだろう?と思った。それは、車いすを自分に合ったものを作ってもらったことや、相手にぶつかられても飛ばないように、そのひもで体を車いすに固定したりしていることがわかった。試合をした後、根木さんに、「すごくパスが回っていた。」と言ってくださったのですごくうれしかったです。これからも、根木さんに教えてもらったことをしっかりしたいです。
☆今日来てくださった根木さんの話は、とってもわかりやすかったです。そして、根木さんのプレイはスピードがとっても速かったのでびっくりしました。ぼくは、ショットするとき、いっつも黒いわくの中にボールをあてていたけど、黒いわくの角の所に当てることなどが知れてよかったです。ショットするときも、ぎりぎりまで待った方が、きまる確率が高いと言うことを教えてもらい、よかったと思いました。
☆一回大きくドリブルをして、それに追いついて、ひざの上にのせて、またこぐのがプロの根木さんの技だった。「みんな思ったよりもうまかったよ。」と言われてうれしかった。内側の黒いかどをねらってショットをすると、何回か入った。でも、リングに当たることが多かったです。
☆今日は根木さんにショットはどこをねらってショットするかと言うことを教えてもらいました。ぼくは角のわくのなかの真ん中をねらってショットするのかと思っていたが、ショットしてねらうところは、角のはしっこをねらってショットすることがわかった。やっと答えがわかってよかったです。
manzo)根木さんのお話はとにかくわかりやすい。シドニーパラリンピックのことを中心に選手村で当たり前になっている施設のことから、「バリアフリー」について考えさせられるお話でした。子どもたちの感想をざっと見ると、車いすバスケットボールの技術に関する記述が多かった。それは、何とかしてショットの技術を知ろうとしていた表れだったと思います。その後に行ったゲームでは確実にショットを決めようと車いすの勢いを加減していました。お別れの時、体育館から全員がうわぐつのまま出て、最後まで車を見送っていたのが印象的でした。それだけ、感動的な出会いができたのだと思います。

『車いすバスケットボールをしよう』そのG 11/13(月) 

8.攻めの作戦づくり
 車いすバスケットボールの授業も終わりにさしかかりました。と言うのも、車いすを借りられる期間も残りわずかで、競技用の赤い車いすは、水曜日に返さなくてはいけないからです。車いすの操作も慣れてきたのに、返さなくてはいけないのはとても残念なことです。根木さんもおっしゃっていたように、もっと車いすの台数が増えて、どこの体育館でも自由に貸し出しできるようになったらいいのになと思いました。
 授業もそろそろ終わらなくてはいけないので、車いすバスケットボールで一番おもしろい所である作戦を立ててそれをゲームに生かす学習にうつります。授業の進め方としては、「3:2」の作戦づくり→練習をして作戦を2,3にしぼる→「4:4」のゲームでの確かめと考えています。なぜ「3:2」なのか?どうして「2:0」から始めないのだ?という批判の声が聞こえてきそうですが、これには訳があります。私の技術指導の系統性の不理解も承知で、この車いすバスケットボールに関しての「3:2」の説明をすると、
@これまでの試しのゲーム(4:4)で多くのチームは、居残りを使っており、ゴール下に守る者へのパス→ショットで得点するケースが多かったこと。居残りに必ずディフェンスがついていたので、攻めは3人での攻めとなること。
A車いすの借りられる時間が限られているので、4:4のゲームに直結する作戦が必要なこと。
B「2:0」はバスケットボールで既習していること。

 これらの点を考え、「3:2」としたのです。(ここは是非意見を頂きたいです。)
 この日の授業では、教室で作ったいくつかの作戦が、実際にできるのかどうか体育館で確かめました。とても複雑な作戦を考えて、だれも理解できないグループ。見ただけで相手チームに取られそうな作戦などいろいろありましたが、どのチームも2つか3つの作戦にしぼられたようです。この作戦が有効なのかどうか次の授業で確かめてもらいます。

<子どもの感想から>
☆考えるのは簡単だったけど、やってみるとけっこう難しかった。結局、考えた作戦は二つしか残らなかった。けど、その二つを試合でうまく生かしたいです。 
☆今日、作成を考えたときに、二回しかこげないことを忘れていたので、実際にできるかなと思ったけど、何とかバスできて考えた作戦ができた。二つの作戦がうまくいってよかったと思った。作戦を成功させるために、はやくバスをした方がよいということがわかってよかった。
☆グループで考えたいろいろな作戦をやったけど、複雑な作戦はわかりにくかった。味方にパスするとき、後ろにパスしたらうまくできなかった。また、まんまえより、横からショットした方が入りやすいことがわかった。
☆今日作戦を実行したら、1・2の作戦は左の人がパスをしてから、何をすればいいのかを決めるのを忘れていた。それで、その人はパスをした後に、ショットを失敗したときのためにカバーに行くことにしようと言うことに決まりました。作戦通り実行するのは難しいです。
☆作戦通りうまくできなかった。ショットした方の反対側の所に同じチームの人がいないと、ショットを失敗したときに相手にとられることがわかった。それと、あんまりゴールに近いとショットができなかった。
☆実際作戦を作って練習したけど、思うようにいかないときがありました。だけど、@の作戦と、Cの作戦はうまくいったので、これらの作戦を活用したいです。
☆4つの作戦を立てて、その中から二つにしたけど、試合中は、敵がボールをうばおうとして、実際は作戦通りにできないんじゃないかと思った。敵にボールを取られそうになったら、すぐにバスをしたらショットの回数が増えるんじゃないかと思った。
☆作戦を立てたら、試合でも勝ちやすいと思った。作戦を立てたけど、ややこしい作戦は覚えられないので、簡単な作戦じゃないといけないと思った。一番良かったのは、「かるぼなら」という作戦だった。これは、パスが少ないのでいいと思った。
manzo)車いすを借りられる時間が少なくなってきた。車いすの操作にもやっと慣れてきたのでこれからだと言う所で返さなくてはいけないというのは何とも惜しい。作戦をゲームに生かすという課題は、車いすバスケットボールもバスケットボールと同じだ。パス中心の試合になっていること、空間認識がしやすいということから、作戦が大きなカギを握る。バスケットボールよりも作戦の可・不可がわかりやすいと思う。「4:4」のゲームをつなぐ「3:2」というのは無茶なことなのかどうか?車いすバスケットボールではどうなのかということを是非聞きたい。

『車いすバスケットボールをしよう』そのH 11/14(水) 

9.作戦をゲームに生かす<研究授業>
 今日は、いらんけどせなあかん同和の授業研でした。王寺町の幼・小・中学校の先生が我が校に来て研究授業を見てもらうというものでした。全学年の公開授業でしたが、6年生では我がクラスが「車いすバスケットボール」の授業をみてもらいました。
 この日の授業は、昨日までに考えたいくつかの作戦を、相手チームと野球型バスケットボールをしながら確かめました。そして、自分たちの作戦を二つにしぼり、後半の4対4のゲームで生かすという流れで授業を進めました。
<本時案>
○ねらい
グループで考えた 「3:2」の有効な攻めを実験により明らかにし、それをゲームに生かす。
○展開

学習活動  指導上の留意点
1.学習内容の確認

2.実験
「3:2」野球型バスケットボールを行う。

3.実験のまとめ

4.ゲーム
「4:4」のゲーム

5.ゲームのまとめ


・攻め3守り2の車いすバスケットボールを行い、グループで考えた作戦のうちのどの作戦が有効なのかを確かめさせる。
・プレイの終了ごとに作戦が成功したのかどうかを確認させる。

・どの作戦が有効であったのかを明らかにし、ゲームでどの様に生かすのか話し合わせる。




・考えた作戦はゲームに生かせたかどうか、ゲームの記録を見ながらグループノートにまとめさせる。
・有効な作戦を公表し、みんなのものにする。

(1)「3対2」野球型バスケットボール
 前時に2個〜4個の作戦を立てていたので、実際に作戦は有効なのかを、他のチームをディフェンスにして確かめました。
作戦がうまくいったかどうかを次の4点で確かめてもらいました。
◎作戦通り動けて得点できた
○作戦通り動けたけど得点できない
△作戦通り動けなかったが得点できた
×作戦通り動けず得点できない

この4つの場合で、「◎○」の場合を作戦成功として、有効な作戦を2つにしぼりました。

(2)「4対4のゲーム」
しぼった2つ作戦をゲームに生かすということを目標に、4対4のゲームを行いました。パスをもらったときに、作戦を考えて動いている班もありましたが、ほとんどの班は、作戦などおかまいなしにゲームを楽しんでいました。何のために作戦を立てたのかわからないので、もっと作戦を徹底させることが大事だと思いました。


<子どもの感想から>
☆今日の車いすの野球型バスケットは時間が少なかったので、あせって点が入りませんでした。相手のこうげきをすぐに終わらせて、自分たちの攻げきのときに長く持たせるようにしたいです。そして、近くからうったボールは確実にショットするようにしたいです。
☆試合で作戦を生かすはずだったけど、作戦通りにはいかず、動きがバラバラになってしまいました。でも、点も取れて、試合にも勝ってまあいいかなという気持ちです。今度は、作戦がうまくいって勝てればいいなと思いました。
☆車いすバスケットの野球型のときは作戦を立てていた。初めの方は、作戦通りにいかず、先に一点取られてしまった。けど、2回裏、作戦が2回連続うまくいき、小林君とぼくが一点ずつ取って勝てた。ショットも二本中二本入った。ぼくは、これからもショットを入れていきたいです。
☆野球型バスケットをしているときは、考えた作戦を使えたけど、本当の試合の時は、ほとんど使えなかった。もし、攻める回数が多かったら、使えたかも知れなかったけど、ぼくたちは攻められっぱなしだったから、攻めるチャンスも一、二回しかなかった。その攻めれない理由は、ぼくがパスを送ってもちゃんとパスをとってくれなかったからだ。たまに取ってくれるけど、その後、変な所にパスをする。ぼくは、その悪いところをなおおしたら、ぼくの班は強くなると思う。
☆野球型バスケットをしたときは、作戦通り動けなかったり、パスを失敗して、作戦通りにはできなかったです。でも、作戦が成功すれば点が入りました。だから、作戦さえ成功すれば得点が入ると思います。
☆野球型バスケットのときに◎だった作戦を何度もしていると、相手に知られてしまって、ボールを取られたので、これでいけるかなと思った。試合になると、私は作戦のことを考えずにしていました。試合ではかたまっていたので、バラバラになろうとしてもできないのが私の班の欠点でした。
☆今日、実際に作った作戦を試合で試してみると、ほとんどが作戦通りにうまくいったのでよかったと思います。でも、パスはなかなか通らなくて何度か失敗しました。
☆今日の車いすバスケットで、立てた作戦のたいていはうまくいっていたけど、ショットができないという所が2回ぐらいあった。後は、作戦を忘れないということとショットを入れるだけだ。
manzo)子どもたちも一所懸命プレイしていて、授業そのものはまずまずだったと思います。授業後の研究協議でも概ね好評な意見が多く出ました。ただ、同和教育の授業研なので、同和教育に関する部分で否定的な捉えられ方をする意見もありました。奈良新聞社が取材に来ていて、子どもが取材を受けていました。

『車いすバスケットボールをしよう』そのI 11/15(木) 

10.作戦をゲームに生かす
 考えた作戦を2つに絞り、それをゲーム中に生かすように指示しました。また、ゲーム後には、それぞれの考えた作戦が有効であったのかどうか。グループごとに確かめさせました。

1班 2班 4班 3班
manzo)ゲームは1対0などのほんの僅差で勝敗が決まってしまうので、ショット成功の重みというのがバスケットボールよりもわかります。攻撃のチャンスをどれだけ得点に結び付けられるのか?確実に一本を決めようとする気持ちが伺えました。この日の授業では、とにかく作戦を意識するようしつこく指示したのですが、作戦を覚えていても、ゲーム中のどの場面がその作戦を生かせる場面になっているのかわからないようでした。この部分は、丁寧な指導が必要だと感じましたが、時間切れで終わってしまいました。

『車いすバスケットボールをしよう』そのJ 11/16(金) 

11.作戦をゲームに生かす(まとめの試合)
 競技用の車いす8台とふつうの車いす5台は水曜日に返却しました。これでふつうの車いす11台となりました。そして、まとめの試合をおこない、車いすバスケットボールの授業を終えました。
 まとめの試合は、それぞれのグループで作った3人で攻める作戦をゲームで生かすことを目標にして、グループごとのゲームを楽しみました。ボールをもらったときに後の2人の動きをどうするのか?そこを意識するようにゲーム前にもう一度自分たちの作戦を確かめさせました。そして、最後のゲームに。研究授業のときもそうだったのですが、作戦をゲーム前に確認していても、いざゲームになると、なかなかそれが生かされなかったようです。中には意識して、それぞれのポジションにつくグループもありましたが、試合中では困難だったようです。しかし、ショットしなかった時のカバーや、ショットした直後の動き方などについて決めていたグループもありました。また、パスをもらうときの声かけやパスを出す人への指示などができているグループもありました。
 やっと車いすの操作に慣れてきた所で、これからゲームが楽しい所なのに、授業を終えなければならないのはとても残念なことです。もっと長い間車いすを貸してくれるようになったらいいのにと思いました。


<子どもの感想から>
☆最後の試合で負けてくやしかったです。最近はショットが入らなくなった。たぶんボールをもらってショットするのに時間がかかってしまうからだと思う。また、相手からボールをとれなかたからだ。
☆せっかく車いすバスケットがうまくなってきたのに、もう終わりなんて、もっとやりたいです。どう攻めるか、どう守るか、だれがだれのマークをするかなどわかってきた。ちゃんと作成を立てて、動き方を決めて、試合でまだ生かせなかったのでもっとやりたかったです。
☆今日は車いすバスケットボールの最後の試合をした。1試合目は、1点を取られて0対1で負けた。2試合目は、自分のゴールの所にだれもいずに、ショットされて0対1でまた負けた。試合の中でぼくは1回もショットを入れていなかったので、もう少し続けたいと思った。
☆バスが通っても、ショットが入らないから、ぼくらのチームは負けることが多い。確実なショットを決めることができなかった。また、もっと低いパスを出して、バスを回すといい。高いパスだと取れないから確実にボールをわたす必要がある。
☆車いすバスケットで最後の試合、二勝できなくて残念です。でも、車いすバスケットをしていい思い出ができました。車いすバスケットなんてもうやる機会がないから、よかったです。
☆最後の試合は1勝1敗だった。ぼくはチームの成績じゃなく、すごいことができたと思う。それは、車いすを操作してバスケットボールをすることだ。2週間でできたことがぼくはすごいと思う。ぼくは車いすバスケットはいいスポーツだと思いました。
☆今日の試合は、勝てたのでよかった。でも、根木さんの教えてくれたことは、全然できていないので、ちょっと残念だった。でも、またできるなら根木さんのアトバイス通りにやりたいと思う。
☆今日は最後の車いすバスケットだったが、相変わらずショットチャンスがあるのにショットができなかった。でも、パスを回すのはすごくうまくなったので、簡単にゴール前まで進めた。でも、相手もパスを回すのがうまいので、守りは難しかった。また今度やるときは、しっかりチャンスをつかんで、ショット成功率を上げたいです。
☆今日の試合は初めて二試合とも勝てたけど、どっちの試合も、1対0だった。結局、最後の試合までショット成功率の悪さはなおらなかった。ぼくらのチームは、最下位かも知れないが、最後の試合は、パスミスも少なくて、一番いい試合ができたと思う。ショットは難しかったけど、車いすバスケットはすごく楽しかったです。
☆今日は最後の車いすバスケットをやりました。長い間車いすバスケットやってきた中で分かったことは、ゴール近くでショットすることやバスのもらえる所に行くと言うことでした。
☆最後の試合で2勝できてよかった。ショットも根木さんのおかげで、確実に決まるようになってきて、最後の方の試合は、どの班ともいい勝負ができたと思う。もっと自分でショットを決めれるようになって、また車いすバスケットボールをしたい。
☆最後の試合だったけれども、全然ショットが入らなかった。パスはうまくできたけど、進んでいけなかった。相手に取られないように進むのは少し難しかった。もっとドリブルなどを使ってしっかりとすすむようにしたい。
☆最後の試合をやって、ぼくは4本中1本しか入りませんでした。でも、ぼくの入れたショット1本で試合に勝てました。強い3班に勝ててよかったです。

manzo)考えた作戦をゲームに生かすというのは、なかなか困難でした。これは、「3:2」という作戦づくりそのものが無理ではないかというよりも、時間的な問題で、もう少し作戦のパターン練習に習熟させれば、ゲームにも生かせたのではないかと思うのです。私はバスケットボールでは確かに「3:2」は無理であると思うのですが、車いすバスケットボールに限っては、ゲームの流れがゆっくりしているので、「3:2」の作戦づくりの成功・失敗はわかりやすいと思うのです。最後の試合には、好プレイのシーンがたくさん見られました。空いた空間に動いて、パスをもらいショット。きれいに決まる場面がたくさんありました。

『車いすバスケットボールをしよう』そのK 11/20(火) 

3.実践のまとめ

1.記録からわかること

 車いすバスケットボールでは、各ゲームごとに心電図をとっています。はじめのうちは、ラジカセにアナウンスの人の声を録音して、再生しながら心電図を書いていましたが、後半は、ゲーム中に心電図を書けるようになってきました。記録からは、触球数、ショット数がわかります。また、攻撃数(ボールを持った一連の攻めの数)や攻撃成功数(攻撃をして得点につながる)からは、どれぐらい有効な攻撃ができているのかがわかります。各グループで出してもらった記録を表にまとめてみました。(表は、1試合4分間のそれぞれの数です。12試合を平均したものです。)

車いすバスケットボール(4分間の試合) ※参考:バスケットボール(4分間の試合)
勝敗
勝(分)負
触球数 攻撃数 攻撃
成功数
攻撃
成功率
ショット数 ショット
成功数
ショット
成功率
勝敗
勝(分)負
触球数 攻撃数 攻撃
成功数
攻撃
成功率
ショット数 ショット
成功数
ショット
成功率
3B6 17 7.0 0.3 4.2% 2.5 0.3 10.0% 2・6 23 12.4 1.1 8.9% 6.3 1.1 18.0%
3C5 18 6.5 0.7 10.8% 4.3 0.6 14.0% 4・4 25 13.0 1.6 12.1% 8.6 0.6 9.3%
7@4 16 7.3 0.8 11.0% 4.1 0.8 18.3% 6@1 27 9.8 2.3 23.1% 6.0 2.3 37.5%
3C5 15 7.0 0.4 5.7% 3.0 0.4 13.3% 0A6 20 9.9 1.3 12.7% 5.6 1.3 22.2%
4B5 18 8.0 0.5 6.3% 3.0 0.5 16.7% 3A3 18 8.1 1.4 17.5% 6.1 1.3 20.4%
7B2 20 8.3 2.5 30.1% 4.9 1.3 26.5% 6・1 23 9.3 4.5 48.6% 7.4 2.5 33.9%
平均 17.3 7.4 0.9 11.7% 3.6 0.7 17.9% 平均 22.7 10.4 2.0 19.2% 6.7 1.5 22.4%

<わかること・4分間の試合で>
・触球数がだいたい15〜20回である。
・攻撃が6回〜8回
・攻撃が成功しているのは、6班をのぞ いて1回以下である。
・ショットが1試合で2〜4本。
・成功率が悪く、10%台の班が多い

 とにかくショットが入りにくい。ほとんどの試合は、1点差の試合でした。

<記録からわかること・子どもの感想から>

☆攻撃成功数が少なすぎる。ショット数は多いけど、成功数はかなり少ない。ボールを持っても、得点につなげられることがほとんどなかった。(1班)
☆触球数と攻撃数が少ないと、負けたり引き分けになっている。攻撃とショットの成功率はほとんど同じだ。ショットはほとんど平均しているけど、ショットが成功したのがすごく少ないのが分かる。一番得点がとれて勝てたのは、六班との試合だった。(2班)
☆ほとんど、一点差の試合だったから、一点入れたら、その一点を守りきるつもりでいたほうがいい。それに、もっと確実によくねらってショットを入れる方がいいことがわかった。 (3班)
☆攻撃数成功数が意外に少ないと思った。攻撃数が平均して七回あるのに、攻撃成功数が0.4回しかないのには、少しびっくりした。(4班)
☆やっぱりショット成功率が悪くて、一試合の平均点が、0.5点だった。そして、触球数が、前半の試合よりも、後半の試合の方が多いことがわかった。たぶんみんなうまくなってきて、パスが多く回せたからだと思う。ショット成功数も後半の方にかたまっているから、これもうまくなったからだと思う。(5班)
☆ショットの成功数が、ショットした回数に比べて低かった。バスケットとちがって、2点をとると、ほとんどの確率で勝つことができる。(6班)



『車いすバスケットボールをしよう』そのL 11/20(火) 

2.感想からわかること

 まとめの感想は、項目を挙げて書くと同じような感想になってしまうので、とにかく授業を終えての感想を思うままに書いてもらいました。とは言うものの、やはり、体育の授業として行っただけあって、ショットやパスなどの技術的な内容を書いた人がほとんどでした。その他にも、作戦やルールに関係すること、根木さんからおそわったことなどの記述もありました。

○感想を分類してみると (29人中 複数回答)
・車いすの操作
  
・操作が上手になった(4)
  ・思っていたより難しかった(3)

・車いすバスケットボールの技術的な内容(うまくなったこと)
 
 ・ショット(19)
  ・パス(13)

・ルールについて(2)
 
・試合時間を長くしてほしい
  ・審判の難しさ(トラベリング)

・根木さんから教えてもらったこと(3)
・障がい者への見方(2)
 
・障がい者もスポーツを楽しめるのだ
 
・障がい者のゲームをつくりたい

<子どもの感想から>
☆一番最初にやったときは、本当にショットが決まるのだろうかと思うくらい、ゴールが高く見えました。しかし、練習を続けていくうちに、力の加減や、ねらうコツがわかって、なれていくのがわかりました。車いすに乗りながら味方にパスするのはとても難しかったです。ぼくは根木さんにいろいろなことを教えてもらってよかったと思います。車いすバスケットは、すごく難しくて、バスケットとちがう所はショットの難しさだと思いました。
☆ぼくは、3年の時、足を骨折したので車いすに乗っていたことがあります。六年になって車いすバスケットというゲームを知って、ぼくなら、かんたんに車いすを動かせると思っていたけど、ちがいました。普通なら、車いすをこぐのが一番うまいはずなのに、ぼくは少しおそかったから、どうしてだろうと思っていました。でも、車いすをこうしてゲームに使えるとわかってよかったです。ぼくは、他にも障がいがある人ができるようなゲームを作ってみたりしたいです。
☆最後の試合は、二試合とも勝てたけど、どっちも一点しか取れなかったので、危なかった。ショット成功率が、最初の五試合は0%だったけど、後の7試合は、30%をこえていたので、ショットが最初のころよりだいぶうまくなってきたと思う。攻撃数も後になってきたら、平均の2倍もあったので、その所もうまくなってきたと思う。あと、職球数が終わりの所が多くなってきているので、最初のころよりパスミスが少なくなり、とるのもうまくなって、敵がいないところに行けるようになってきたと思う。
☆いいところでボールが回ってきても、ショットが入らないことが多かった。でも、根木さんに教えてもらって、黒わくの外をねらうと少しはいるようになった。ぼくは、大きい車いすをこぐのが、重くて大変だった。そして、反則も多かった。ボールを取ろうとして、前傾姿勢になるから、体重が前にかかり、こけて、反則になった。また、車いすバスケットボールでは、2回しかこげないから、いつこぐかを考えてこぐのは難しい。審判をしているときも、何回こぐかを見るが、2回か3回かが分からなかったときがある。審判はバスケットボールでやってるときの方が簡単だったと思う。
☆最初は、車いすを動かすのもちがう所に行ったりして、動かすので精一杯だったけど、車いすに慣れると、左に曲がったり右に曲がったりして、けっこう自由に動けるようになった。転がったボールを車輪を使ってとったりして試合をしました。初めての試合の時は、何気なく自分と同じチームの人にバスをしていたけど、やっているうちに、自分のチームの人だけじゃなく、相手チームがどこにいるかなどを見てパスが出せるようになってきたと自分では思う。野球型車いすバスケットをしたときは、守りがすごく難しかった。攻げきのときは、なんとか作戦通りして、ショットを入れようとしたが、失敗ばかりで、あまり点が入らなかった。ショットは、あせると入らないときが多かった。ショット調査でも自分たちの班が入るのが少なかったので、試合はもっとがんばりたかった。
☆車いすバスケットボールなんて一生に一回できるかどうか分からないスポーツができてよかったです。パラリンピックでキャプテンをしていた根木さんの話を聞いたり、ショットをうまく入れる方法や、車いすバスケットを始めた理由とかを聞いて、根木さんが世界を目指していた時の気持ちや意気込みが伝わり、「もっとうまくなりたい」と言う気持ちが強くなりました。できるだけ正確なショットを、より確実なパスを、最も重要な動きをしようと、がんばろうと思っていたら、もう車いすバスケットボールが終わってしまい、残念です。でも、また車いすバスケットボールをする機会があったら、根木さんに教えてもらったこと(身につけたテクニック、声を出してパスをもらう)と言うことを大事にしてやりたいです。それに、障がいを持っていても、スポーツを楽しめると言うことを伝えていきたいです。
☆最初のことを思うと、比べものにならないくらい、上手になったと思う。それに、バスやショットがよく入ったり、上手にできたと思う。月曜日に根木さんに教えてもらったけど、試合にはあまり勝てなかった。でも、全体的に、パスを出したりショットができるようになって、試合の時も、大きい声を出して、パスができるようになっていた。また機会があれば、根木さんと車いすバスケットをしたいです。
☆他の学校ではあまり車いすバスケットボールをしないから、ぼくはラッキーだと思いました。ぼくは初めて車いすにすわって、ショットが打てるのかと思っていたけど、根木さんやみんなのアドバイスとかで、遠い所からショットがうてるようになってすごいなと思いました。バスケットボールもおもしろかったけど、車いすバスケットボールの方が、ぼくはおもしろいと思いました。もうやらないのかと思うと、もうちょっとやりたかったなと思います。終わったけどここまでやれてよかったです。車いすバスケットボールは体育の中で、一番心に残りました。
☆車いすバスケットボールは、思うように動けなくて、バスがうまくできないことが多かった。下に転がっているボールを拾おうとしたら、足に力が入って車いすから落ちたりして、反則をとられることがあった。ショットするときは、腕に力が入らなくて、私の場合、根木さんが教わった方法でショットしても全然入らなかった。試合中は、ほとんどの時、だんご状態になって、相手にとられる時が多かったけど、作戦を考えてから、それぞれの位置につき、ショット回数もふえた。ショットする機会があったら、ボールを取ったらすぐにショットすればいいと言うことが分かった。最後の試合は、ショットするチャンスがいっぱいあったけど、点数は一点も入らなかった。
☆車いすバスケットを最初に始めたときは、どんなものかと思っていたけど、やってみたら意外と難しかった。車いすをこいでいるとき、手がつかれてしまって、止まってしまったこともあった。試合では、もっとショット率を上げて、ショット増やすようにしたかった。最初より少しだけどてきぱき動けるようになったと思う。今度、車いすバスケットボールをするなら、一人に一台乗れるように、いろんな所から29人分の車いすを借りてきてほしいと思う。また、学校でも「車いすバスケットボールクラブ」という新しいクラブを作ってほしいと思う。
☆うちのチームは、最初は一点もとれず全く勝てなかった。でも、最終的に三位になれてよかった。ぼくたちのチームはかなり強くなったと思う。けど、強くなりはじめたときに車いすバスケットボールが終わったので残念だった。自分ではショットがうまくなったと思う。はじめは、ショットしても全然入らなかったのに、最後の方はほとんど入っている。他にも、パスとかも正確になったからよかった。やっとうまくなったのだから、もう少しでもいいから、車いすバスケットボールをしたかった。

『車いすバスケットボールをしよう』そのM 

3.実践を終えて

実践を終えて子どもたちに幾つかの質問をしました。

「車いすバスケットボール」と「バスケットボール」とではどちらが楽しかったですか?
<結果>
◎車いすバスケットボール・・・・16人
・車いすの操作は難しいけど、できたら楽しいし、やりがいがある。
・車いすバスケの方が点が入った。
・攻め方がおもしろかった。
・ショット成功率が上がったから。
・ゴールが高いので、得点の入らない所がおもしろかった。
・やったことのないゲームだったから。
・思うように動けないのが楽しい。
・みんなと一緒の速さで動ける。
◎バスケットボール・・・・・・・・・・7人
(車いすバスケは)
・ショットが入りにくい。
・動きたい場所に速く行けない。
・動くのがたいへんでつかれた。
・動きがおそいので、すぐにゲームが終わってしまう。
・素早く動けない。
◎どちらとも言えない・・・・・・・・6人
・両方とも楽しかった。
・それぞれに楽しさがあるから。

車いすバスケットボールをもっと多くの人が楽しめるためには、みんなが学習してきた車いすバスケットボールをどのように変えていったらいいと思いますか?
・車いすが倒れないようにすればいい。
・ツープッシュではなかなか進まないから、スリープッシュぐらいはしてもいいと思う。
・トラベリングの反則をなくして、何回でもこげるようにする。。
・ボールがゴールに届かない人がいるから、ゴールの高さを低くする。
・小さい子のために低いゴールを作る。うちらでも、あのゴールは高いから、 1〜3年では、あのゴールでは絶対入らないと思う。
・ショットが入らないので、ショットの時は立ってもよい。
・何度もボールがわくから出るので、もう少しリングのわくを広くすればいいと思う。
・ショットする位置によって、得点を変えたらいいと思う。
・車いすバスケだと、ボールを落としたときに、とりにくいので、もっとコートを広くしたら、エンドラインからでにくいのでいいと思う。
・クラス全員が車いすに乗れるぐらい台数を増やす。一人一台は乗れるようにする。
・車いすをもっと増やして、どこの学校にも車いすをおけば、だれでも楽しめる。
・中学校や高校のクラブ活動に入れる。
・小学校や中学校の勉強にとりいれる。
・ルールブックで広める。
・今のままでいいと思う。

根木さんからどのようなことを学びましたか?
<車いすバスケの技術的なこと>
・ショットのときに、リングの所にある板の四角のかどをめがけてショットすると、確実に入ること。
・パスする時は、相手の方を向いて、正確にしたらいいということがわかった。
・ドリブルの仕方。
・パスをできるだけした方がいい。
・くわしいルールやいろいろなアドバイスをもらった。
・車いすのタイヤを回転させないと、ボールがとれないということもあり、それでとれるということが分かった。
<障がい(者)に関すること>
・車いすバスケットのことだけでなく、 パラリンピックでは、どのようなこと をしているのか、どんな所に泊まるの かということが知れた。
・外国の障がいを持っている人のための 設備のことを知れた。
・根木さんみたいに、足が動かなくなって、車いすに乗ることになったとしても、楽しく生きていけて、一日で友だちを作れる人がいるということがわかった。
・車いすに乗っている時は、一人だけは生活などで苦労することがわかった。

授業を終えて(子どもたちに伝えたこと)
学校で行われる「障がい者」にかかわる学習と言えば、車いす体験やアイマスク体験、バリアフリーチェック(車いすを動かし、街の施設がどれだけ障がい者にとってやさしいものであるのか点検する)など、障がい者→しんどい生活を強いられている→だから、手助けしなくてはいけない。ということを教える授業がほとんどでした。確かに、生活の中で障がい者のしんどさを知ることは必要ですが、長野パラリンピック以降、テレビ番組や本などを通して、障がい者の生活を知ることができるようになってきました。また、バリアフリーということがさけばれ、施設も少しずつですが障がい者だけではなく、みんなが安心して使えるものとなり、少し前とはちがった社会になってきつつあると思います。そこで、学校だけが、障がい者のしんどさだけを伝える学習に終わっていてはいけないと思い、新しい試みとして、「車いすバスケットボール」にいどんだのでした。「車いすってこんなことできるんや」「動かしたらおもしろいやん」そんな見方も一方では大切ではないかと思ったのでした。そのためには、ただの体験で終わってはいけないと思い、体育の授業でやることにしました。「車いすバスケットボールをうまくなる」それこそ、障がい(者)とのプラスの出会いであると考え授業を仕組んだのでした。学習を進める中で、根木さんとの出会いを一つの節目としました。パラリンピックのお話を聞き、実際にプレイを見て、車いすバスケットの技術を学びました。みんなに紹介した根木さんからのメールにもあったように、みんなは何とかして、知ろう、わかろうとしていました。始めのうちは、動かすのさえ困難でしたが、上手にパスを通して、ショットに結び付けることもできました。みんなは確実にうまくなっていったと思います。車いすバスケットボールの学習を通して、みんなはたくさんの感想をかいてくれました。その時に感じたことを、おたよりに載せていますのでもう一度読み返してほしいです。「車いす」や「障がい(者)」に対してどのような見方ができましたか。学習をふり返ってほしいと思います。    


4.実践をふり返ると

(1)体育の授業としての「車いすバスケットボール」
 子ども達は、車いすバスケの前に、バスケットボールを経験している。バスケットボールと比べて、車いすバスケットボールは、動きがゆっくりしていおり、また、ショットもなかなか入らないので、子どもの反応はどうなのか、実践に入った所から気になっていた。実践を終えてバスケットボールとの違いから、車いすバスケットボールの教材価値について考えてみたい。

○やっぱりゴールは高い
 子ども達にとっては、初めての経験であるので、個人差があまりない段階から実践が始められた。そのため、上手な子のワンマンプレイによって勝敗が決してしまうことはないので、バスケットボールよりもチームとしての作戦が求められる。しかし、試合では、いくら作戦が成功しようと、最後のショットが決まるかどうかで勝敗が決まってしまい(ほとんどの試合が得点が3点以下だった)、この点においては、個人のショットの技能と密接な関係にあると言える。子どもの感想からも、ショットが決まりにくいことを挙げており、実際、体の小さい子や投力のない子にとっては、ゴールが高くショットが入らなかった。ゴールをもっと低くしたらいいという子どもの感想にも額ける。作戦は成功しても、最後はショットを決められるかという個人の技能に負う部分が大きい。ショットの習熟を高めるとともに、車いすに座っている分の高さを下げたゴールが必要だと思えた。

○ドリブルなんて無理!パスの必然が生まれ、それが作戦へと結びつけられる。
 ドリブルをするとボールが車いすに当たって転がったり、とられたりしてしまうので、どうしてもパスが不可欠になってくる。どこでどうパスを出したり、もらったりするのかが課題となり、作戦の必然が生まれる。空いた空間に移動→ショットという球技で必要とされる技能は、バスケットよりも身に付くと思われた。バスケットボールのようにプレイ空間がめまぐるしく移動しないために、相手のいない所を見つけやすく、そこへ移動してパスをもらう場面が試合を通して見られた。ゲームの流れがゆっくりしているので、作戦がわかりやすく、それに応じた動きができた。また、作戦の成否が周りから見ていてわかりやすかった。しかし、自分たちのチームが作戦を共通に理解はできているものの、実際の試合でそれを生かせたとは言えない。

○「3:2」→「4:4」でいいのか?
 車いすを借りられる期間が限定されているということもあり、「3:2」のゲームから「4:4」に結びつけた(「3:2」の理由は先に記してある。)が、この系統がよいのかどうか検討する必要がある。

○うまくなった事実が確かめられる
 とにかく「体験」で終わらせる「車いすバスケットボール」実践にはしたくなかった。そのためには、子ども達がうまくなったという実感を味わわせることが第一だった。その一番の近道として、体育のバスケットボールの授業と同じ流れで、車いすバスケットボールを行うことにあった。ショット調査に始まり、はじめのゲーム、作戦づくり、作戦をゲームに生かす、まとめのゲーム。この流れで学習を進めてきた。子どもの感想にも時間を追うごとに「パスが通るようになった」という記述が増えてきたこと、ショット成功率を課題としたことなど、子ども達はより客観的にゲームを観れるようになってきた。また、最後の時間に、全ゲームにおける自分の触球数、攻撃数、ショット数、ショット成功率など、心電図から拾い上げ、その変化に着目させた。全ての子どもにあてはまるわけではないが、データからも、うまくなっている事実が確かめられた。

  子ども達は、バスケットボールと車いすバスケットボールを体験したので、最後の時間に、「どちらが楽しいと思うのか?」という質問をしてみた。車いすバスケットボールをした直後ということもあり、車いすバスケットの方が人数的には多かった。詳しくみていくと、技能の高い子どもにとっては、車いすバスケは楽しくなかったようで、そうでない子どもには反対のことが言える。ドリブルで抜いていくことができないことや、ショットが入らないと言う理由を挙げていた。反対に、技能の低い子どもにとっては、バスケットボールよりもボールに触れる回数が多くなったり、パスをしてもらえたりと、活躍の機会が増えたようである。
  以上のことから、作戦をゲームに生かすという球技のねらいやチームプレイでゲームに勝つという目的を達成するためには、バスケットボールよりも車いすバスケットボールの方が優れているのではないかと思われる。ただ、先にも述べたように、ゴールの高さが問題で、これは克服すべき点だと言える。ゴールを下げることによって(高さの変えられるゴールは少ないと思うが)ショットが安定し、得点が入りやすいようになれば、さらにゲームも楽しめるかもしれない。

(2)「障害児教育実践」としての「車いすバスケットボール」
「ユニバーサルデザイン」を目指した実践として、どう結実したのか、あるいはそうではなかったのか点検する必要がある。
 まず、「車いすバスケットボール」を、単なる「車いす体験」で終わらせないことに重きをおき実践したため、とにかく「うまくなること」や「うまくなった」という実感を子ども達に味わわせることが必要であった。それは、以下のような理由によるためである。
 障害者スポーツの多くは健常者の行う既存のスポーツに、ルールの簡素化や特別ルールなどの加工を施す。障害者の視点から既存のスポーツを見直すという動きは、高度化を目指す競技スポーツへの警鐘とともに、現在のスポーツを誰もが楽しめるものにしていく大衆化への大きな役割をになっている。しかし、その反面、加工の部分が大きくなると、障害者のみのためのスポーツとなり、障害者の間でしか行われないというマイナス面も同時に備わっていた。障害者スポーツとしての認知の度合いが増せば増すほど全ての人のためのスポーツではなくなるという皮肉な結果をもたらしてきたのである。
 しかし、「車いすバスケットボール」の場合、車いすを使用することによって、道具としての面白さが別条件として備わってくると言える。これは、既存のスポーツを道具や設備や環境の条件を変えて新たなスポーツが生まれるのと同じである。バスケットボールを身体的な条件から楽しめないから「車いす」を使って楽しむという捉え方ではなく、「車いす」という道具を使うことによって、「車いすバスケットボール」にしかない独自の面白さが生まれ、それを味わうという捉え方ができるのである。このような見方こそが、健常者スポーツを薄めた障害者スポーツという捉え方を否定し、障害の有無に関係なく行われる「ユニバーサルスポーツ」として成立するのである。(「車いすバスケットボール」のルールは、健常者が入ってプレイすることも想定して作られていることは注目されるべきことである。)そのためには、「うまくなった」という実感が必要であり、「うまくなった」体験そのものが、障害(児)者を肯定的に捉えるのことができるのではないか、このような仮説の元で始めた実践だった。
 実践では、車いすの操作を含めてうまくなった事実を確かめさせた。「うまくなった」という感覚的な実感を、ショット成功率、攻撃率などの記録に目を向けさせた。そして、何となくうまくなっている感覚を記録に置き換えることによって、自分たちが確かに学習を通してうまくなってきている事実が確かめられた。しかし、実践自体が体育の実践であるために、「ユニバーサルスポーツ」として障害とか、障害(児)者をどう、肯定的に捉えられたのかという点では確かに弱いしそれを本実践から判断するのは難しい。実践では、道徳的なアプローチを極力排したために、「車いすバスケットボール」の経験で、子どもがどう障害者スポーツ、或いは、障害児(者)について理解できたのかを知ることは大変困難であるのは当然だろう。本実践は、体育としての実践で終わっているが、この「車いすバスケットボール」の経験の後に、直接的に「障害者スポーツ」を題材にした授業が必要だったのかもしれない。
ただ、強いて取り上げるならば、最後の時間に書かせた感想には、子ども達は、「車いすバスケットボール」は確かに楽しいが、現行のルールでは、ゴールの高さが高くみんなが全て楽しめるものではないと言うことに気づいている。障害者を含めた全ての人が楽しめるように考えられた「車いすバスケットボール」のルールをさらに「OURルール」として、作りかえようとする眼が芽生えているのだ。この見方こそが、「ユニバーサル」の発想の基となるのではないかと考えるのである。
 最後に、体育の授業で技術学習を組織する事によって、子どもの能力観を変えたり、学習集団が学びの集団に変わっていったりと、体育科の本来のねらいである「うまくすること」「わかること」だけに留まらない側面があるということが、数多くの実践で語られている。これらの実践は、道徳的な問いかけを排し、あくまでも教科学習(技術学習)に徹し、結果として備わったものである。この点で、本実践も同様、「道徳」を排し、「科学・文化」の中から障害(児)者理解を試みた実践として位置づけたい。大変荒い提起であるが、「道徳」の側からしか問うて来なかった従来の障害児教育実践をひとつひとつ点検し、「科学・文化」の側から問うという新たなスタイルにつくりかえていく作業が今必要だと感じるのである。


もどる