「幼児のマットあそび」 −わしら同志会の体育実践−    


1.はじめに
 親の生活、子どものおかれている状況が、想像以上に厳しくなってきて、子どもらしく生きることが大変しんどくなってきている。子ども達を見ていると、今まで以上にだれもがわかて、感動することの大切さをより感じ、ひとりひとりが目標に立ち向かっていく姿の響き合い、伝え合いの必要性を強く感じる。

2.マットあそびのおもしろさと、教材化の視点
 マットあそびとは、器械体操の一領域である床運動から教材化されたものであり、マット運動の文化的特質として、他の運動では味わえないおもしろさがある。
 教材化するにあたっては、
・運動文化の本質を失わないこと
・子どもたちの発達に見合ったものであること
・子ども達でつくりかえたりしながら、更に工夫できること
・友だちと教え合い(伝え合い)ながら遊べること
・「できた」「うまくなった」ということが、子どもにはっきりわかること

 これらのことを考える必要がある。

3.系統的指導をするための側転の技術特質
 系統的指導をするためには、教材の技術構造や技術特質を確かめておくことが必要である。
・回転したとき、自分の体が逆さまになった感じが、大きな空間でわかること
・自分の体を支える支点がわかること
・頭と腰の位置の変化がはっきりわかること

 これらは側転の持つ特質であり、子どもが学習していく内容が、だれにでもわかりやすくより感動が大きいと思われる。

4.側転の技術構造
・側転は、連続した一過性の技であるため、その体の動きの部分部分をつなぎ合わせようとしても側転にならない。
・側転と倒立では、基本的な技の組み立てが違う。(側転は転回、倒立は静止という全く動きの方向が反対の運動である。)
 側転での動物の模倣あそび、
回転感覚、逆さまになる感覚、両腕に少しずつ体をのせいていく感覚など、系統的に指導すると、どの子にもわかり・できることになる。その上で、わかりあうことができるという集団の質の変化にも迫ることができる。

5.幼児期の子どもの特徴と取り組み
 幼児期の子ども達は、つもりの世界を他の済み、みんなでいろんなごっこあそびが楽しめる。
私の場合、今受け持っている子ども達と、魔女の宅急便のまじょねえさん(保母)とごっこあそびを年間通じて発展させたり(3歳児クラスの時)、子どもも保母も孫悟空になりきって、お釈迦様の存在でホッとしたり、金・銀角と対決しようとしたり(4歳児クラス)等々、やなりごっこあそびを発展させてきた。
 お天気だったら、お釈迦様の登場かと空に向かって、「ワァォー」と言い、空に向かってすごい意気込みで足を上げたり、雲が出てくると、銀角・金角がやってくると、やはりマットに向かって「ワァォー」と叫びながら側転をしている。
 運動会当日も、お釈迦様が見ていると、たくさんの観客のいるなかで、「ワァォー」と生き生き大きな声で言っていた。「ワァォー」の声で、より側転にも迫力が出て、大きな動きになっていた。
 それは、ちょっぴり自分に対して自信のなかった(自我の弱い)子が、大舞台でしっかりと堂々と自己主張を側転を通じてしていけることにもつながっていたように思う。みんなへの初めての、クラスみんなで自己主張ができたと思う瞬間だった。
 この時の感動の大きさは、絵からも、語る言葉からもしっかりと伝えてもらった。この中には、0歳の時からずーっと受け持っている障害児も入っていることが、私にとっては大きな喜びであり、しっかり育ってきているという実感も持たせてもらえるものだった。

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