「ペースランニング」 −わしら同志会の体育実践−
1.「概念くだき」−オリテ(オリエンテーション)ですること
「長距離走・マラソンの目的は?」と、児童・生徒に聞くと、「体力づくり」「忍耐力を養う」等の答えが返ってくる。これはかつて文部省が進めていた「体力主義」を受け入れてきた教師の影響であろうが、この既成概念の克服から始める必要がある。
学習の目標は以下の2点である。
・疲れずに速く走れる方法がわかること。
・その方法で走れるための技術を身につけること
学習のねらいをどこにおくかによって指導方法は多少異なるが、「上下動を少なくした走り方で、イーブンペースを守ることが疲れず速く」につながることを理解させる。
2.100mトラックが最適
学校のトラックの長さを調べ、直線部分の長さを短くして100mトラックを作り、10mごとに刻みを入れる。また、ストップウオッチは3名につき2個用意できればBEST(ウォッチ1個ならスピリットタイムを計りながち、1周ごとのタイムを即座に出す早見表を活用。−紙面の都合上カット)。
3.目標タイムを設定する
100mを何秒で走るかを目標ペースと言いそれを決めるために、次のようにする。
@昨年のマラソン大会の記録を100mのペースで表す。
▽2000mを10分20秒なら、
(60×10+20)÷2000×100=31秒
A700m〜1000mの試走をして、100mの平均ペースを出す。
B以上のデータから今年の仮の目標ペースを決める。
羽衣小時代、全児童のデータを4年間にわたって分析した結果、1年生から2年生にかけては、多少距離が伸びても100mにつき1〜2秒速くなり、他の学年の児童は前年に比べて、0.5〜1秒速くなるのが一般的であることがわかった。
4.トリオ学習
3人組を作り、一人が走り、残りの二人が2個のストップウオッチ操作と、記録用舐の記入とランナーへのアドバイスを受け持つ。図のように、それぞれの組において、ランナーと記録者2人とは10mずれて位置し、スタートする。(10mずれるのは、ウォッチを止めてからアドバイスの内容を決めるまでに10mの時間的余裕を持たせるためである)ウォッチ@は1・3・5・・・ウォッチAは2・4・6・・・周目の計測をするためである。目標ペース31秒の児童の1周目のタイムが28秒なら「3秒速い」と声をかけ、33秒なら「2秒速い」と教えるのである。
ランナーはアドバイスを意識して、次の一周を通して3秒速くしたり、2秒遅くしたりするのである.走りを修正しながら、目標ペースの速さの感覚を把握していくのである。
目標ペース
何周目 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
各周タイム(B) |
28 |
33 |
30 |
31 |
32 |
B−A |
−3 |
+2 |
−1 |
0 |
+1 |
中学年では、「一番苦しかったのは何周目で、その時どのように走ったか」等の記入もさせる。苦しいときには上下動を小さくしながら、できる限りペースを守るようにしていると、多少距離が伸びても走り続けることができることを体験させる。
5.高学年では
ランニングのスピードは、ピッチの回数とストライドの幅で決まる。ペースランニングは、この両方を変えすに走ることができれは良いわけだが、疲れてくると、ピッチが速くなったり、ストライドが短くなってくる。
ピッチを変えない点は、ランナーがその意味を理解し、意識化することでかなり維持できるが、ストライドは疲れとともに短くなってくる。スタート直後10mを何歩で走ったかを教えておき、中盤・終盤も歩数を数え、変化を認識する。ストライドが短ければ、腕の振りを強くするなどの工夫をする。
6.評価
@ベースランニング中、イーブンの走りができるようになったかどうか。
Aアドバイスの的確さ
Bマラソン大会の目標タイムを設定
100mにつき1秒以内のずれなら目標達成(目標ペース31秒で2000mなら32秒の20倍、640秒、つまり10分40秒以内なら達成と考える)
この実践は舩冨公二氏によるものです。
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