わしら同志会の体育実践
例えは悪いですが、1才を越えた赤ちゃんは母親に呼ばれると、母親に甘えたくて母親の元に向かいます。間に障害物などがあってもきちんと回り道をして(あいている空間を見つけて)、母親の元にたどり着けます。そんな子どもの認識面での実態を授業に引き寄せ取り組んでみました。
まずはBグループ生徒でのプレ実践
K養護学校高等部では、自立活動を主とした学習に取り組むCグループ、就学前の学習課題に取り組むBグループ、そしてAグループと3つの学習グループに分かれて授業をおこなっていますが、体育においてはABグループ合同で取り組んでいます。
まずは、学習内容の把握や習熟に時間のかかるBグループ生徒4名に次のような課題で取り組みました。
(赤ずきん:生徒)
○
● ←(狼:教師)
◎
(おばあちゃん:教師) |
「赤ずきん」の本を読み聞かせ気持ちを高めて、赤ずきん役生徒一人ひとりに食べ物を配ります(一人ずつというところが、意識づけのためにも重要なようです)
そして、おばあちゃん役の先生まで届けるよう指示します。きちんと届けれるようになったところで、狼のお面を被った教師が赤ずきんを通せんぼします(防御)。 初めて狼が出てきたとき、生徒の様子は「狼さん、どいて下さい!」と口でお願いしたり、「狼さんこれどうぞ」と食べ物を渡してその場をクリアしようとしたり、最初に動機づけで読んだ本が裏目に出てしまいましたが、おばあちゃんが声かけすることで、何とか狼さんをよけておばあちゃんのところに届け物が出来るようになりました(最初はわざと進路をあけたり、段階的に防御を強化していきます)。最後はテーブルに並べた食べ物を繰り返しおばあちゃんのところに運べるようになったところで、プレ実践(4〜5時間)を終了。
いよいよAグループも加わっての実践
新入生も加えた1学期の実践で、赤ずきんゲームを再開しました。肢体不自由校では移動能力に大きな差があるので、移動面や認識面などから3つのグループに再編成し、同じ赤ずきんゲーム(part1)から取り組みました。興味づけとして、赤ずきん役には赤い三角巾を、オオカミ役には100円均一コーナーで買い求めた宴会グッズの耳を、おばあさん役には、地味な色の布を肩に掛け、雰囲気作りに努めました。嬉々として取り組むプレ実践済みの生徒。新入生も最初はとまどいながらすぐに慣れ、さい先の良いスタートとなりました。
徐々に生徒にも防御役も取り組ませていきましたが、攻撃に比べ防御はかなり空間認識が必要なことを感じました。具体的に言えば、おばあちゃんのすぐ近くならばおばあちゃんをちゃんと背にして守れるのですが、おばあちゃんとの距離が空けばあくほど位置関係が把握できず、ややもすれば後を追う状態になってしまうのです。防御は全員の課題にはなりませんでしたが、一部の生徒はかなりディフェンスもうまくなり、1対1では攻撃が難しくなりました。頃合いです。
赤ずきんゲームpart2・part3へ
赤ずきん役を2名に増やし、2:1での攻防を競う赤ずきんゲームpart2へ、課題の達成できたグループから順次移行しました(ボールは一人一つ)。
攻撃が有利になりましたが、軽度の生徒のグループでは攻撃もディフェンスも厳しくなり、おばあちゃん役(これも途中から生徒)に接触する場面が増え、危険な状態になりました。おばあちゃん役をなくし、タッチラインを作ることで赤ずきんゲームは見事タッチフットボール(赤ずきんゲームpart3)に変身です(3人一組、ボールはチームで1個)。
奥の深かった赤ずきんpart3
ところでボール1個にすることでチームでの協力など作戦の要素が生まれてくるわけですが、「子どもたちが自ら気づき、自ら解決する」グループ学習は本当に難しい物です。せっかく1対1でいい動きが出てきたのに、コートの人数が増えるととたんに生徒たちはどう動いていいのかわかりにくくなります。
その理由は、
・ディフェンスが多くなり、空いている空間が少なくなったこと。
・味方が有効に動いていないため、さらに空いている空間が少なくなったこと。
・情報量が多く、瞬間の状況判断が難しい。
というわけで、part3においては、防御が随分と有利になり、生徒も私も産みの苦しみを味わいました。
名監督出現!!
産みの苦しみを味わう中で、ディフェンスについては、第一の防御ラインを突破されたときにフォローに入れるよう、「逆三角形」のフォーメーションが(教師の教え込みで^^;;)生まれました。攻撃の方は、ボールを後ろ手に隠し持ち、誰が持っているのかわからないようにする、通称「かくれんぼ作戦」と、ボールを持っていない人が壁になる「壁作戦」という一般的な二つの作戦を指導しました。
そして、それを使い分けたのが生徒のGさん。彼女は心臓疾患のため運動制限があり、今まではずっとおばあちゃん役かチームのリーダーでみんなの意見をまとめるぐらいしか活躍できる場が無かったのですが、ずっと友人の様子を観察し続けただけあり、足の速い遅い、周囲が見えている・見えていないなど友だちの様子を良くつかんでいました。ディフェンスの様子や試合の流れを判断し、彼女がチームメイトにサインを送りながらゲームを進めるのを最後のみんなの学習内容にし、授業を締めくくりました。
最後の試合は自分の課題に合わせ、赤ずきんゲームの1〜3までのどれかに各自がエントリー。移動スピードをそろえることで、重度の生徒同士の熱い攻防も見られ、友だちの声援が大変にぎやかに授業を盛りあげてくれました。
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