1.はじめに
「新学力観」だの「めあて学習」だのと言われていますが、鉄棒においては「逆上がり神話」みたいなものがあって、現場ではなかなかその呪縛から開放されていないのが現状ではないでしょうか。それは教師だけでないようです。現在担任している子ども達(小4)に鉄棒が「好きですか・嫌いですか」「得意ですか・苦手手ですか」とたずねてみたところ、どの理由の中にも「逆上がり」がその判断基準になったような回答が見られました。まずその辺りから鉄棒の授業が始められなければならないでしょう。
今回は、その鉄棒学習の導入期あたりの私なりのエ夫をいくつか紹介します。
2.「鉄棒ブーム」を巻き起こせ
「意欲・関心・態度」などとよく言われますが、鉄棒にはそれらを萎えさせてしまう条件がたくさんあります。跳びつけない・腕で支えられない・逆さまになれない・振れない、そんな子どもが必ずいます。ひどいときにはクラスの半数以上がそんな子どもであることも珍しくなくなってきています。おまけに、手や足が痛い・恐い・落ちるなど嫌いになる要素が加わって、一部の鉄棒好きの子を除いて、意欲どころか興味さえ持たない種目の一つになりがちです。
鉄棒に意欲や関心を示すには、やはり技ができたりできそうな見通しが持てたりすることが必要です。そのためにはそうしたことが実現できやすい体になっていなければなりません。ところが、幼児期や低学年のまでの間に、木登り・高所渡り・固定遊具等の遊びが不十分であれば鉄棒運動のための感覚づくりがてさていません。となれば、授業時間だけでは殆ど成果は望めません。そこでどうしても必要になってくるのが、「鉄棒ブーム」です。休み時間になると先を争って鉄棒に群がる、そんな状態を作り出すことが必要です。
3.技集め・発明技づくり
では、どうやって「鉄棒ブーム」を作り出すか?私は「技集め・発明技づくり」と「飛び飛び大会・振り振り大会」から入ることにしています。
「技集め・発明技づくり」でまずねらいたいのは「鉄棒の概念崩し」です。鉄棒=逆上がりの様に捉えている子ども達に、「鉄棒の技はもっと豊かで多様であり、自分で作ったっていいのだ」と捉えさせたいと思います。「何もできないわ」といいながら出てきた子が鉄棒に跳びつけば、あっ、それは“跳びつき上がり”、そのままボンと後ろに降りたら“後ろ跳び”…なんでも名前を付けていって技にしてしまうのです。「えっ!こんなのも技?」「こんなんでええの?こんなんやったら…」といった調子でどんどん技が集まります。ちょっと変わった技や出来そこないのようなのが出てさたら「発明技」にしてしまうのです。今年4年生でやってみると1時間で約30の技が集まり、そのうち20ほどは苦手な子も含めてほぼ全員がでさる様なものでした。「逆上がり」に縛られていた子たちの表情がいっぺんに明るくなります。
ここでやりたいもう一つのことは「技の分類」です。集めた技を「上がる技・回る(振る)技・降りる技・その他」に分類するのです。技を仲間わけして捉えることの基礎になりますし、後の「連続技づくり」に役立ってきます。
4.飛び飛び大会・振り振り大会
技集めの段階で、逆上がりのしばりから解き放たれた子ども達はかなり鉄棒に興味を持ち出します。けれどそれだけでは、本当にやりたい・やってみたい技(やってほい技)ができるようにはなりません。そういった技に挑戦するまでのつなぎと、感覚づくりのために「飛び飛び大会・振り振り大会」をします。
すぐにできる“後ろ飛び”、座ることができたらみんなができる“座り飛び”、すぐにできる“ツバメ振り”、少し練習が必要な“こうもり振り”を共通の種目としてグループ練習し、グループ対抗の大会をします。
どんな種目を用意するかは、その後の鉄棒学習の中で中心技に何を持ってくるかで変わってさます。私は中学年だったら、スーパーストロンチョ・こうもり振り飛び・足掛け後ろ回り・腕立て後ろ回りなどをぜひやらせたいと考えています。そこでそういった技の大事な運動要素が含まれている技で、飛び飛び大会や振り振り大会をするのです。そうすれば、大会に向けての練習がそのまま中心技の練習になります。
共通種目以外に「エントリー別の種目」も入れ、それぞれの最高記録を「クラス・ギネス」としていつでもチャレンジできるようにしておさます。これも鉄棒ブームに火を付ける役割をしてくれます。
ここまでに5・6時間はかかりますが、ここまで来れば意欲や関心はもちろん、学ばせたい中身に向かう体も大分でさてきます。そこで中心技や連続技の学習に入っていくのです。
※条件整備
導入期には上記のような取り組みと平行して、恐怖や痛みを少しでも和らげる条件整備も大切です。鉄棒の下にマットを敷く、膝当て、腹当て、手のプロテクター・ジャージ等は必ず用意させたい。(手作りの方法もあり)鉄棒を布ヤスリで磨くことも滑り止めには効果的です。