1.イニシアチブのとり方 〜謙虚にねばり強く、そして強引に〜
こと水泳の授業に関しては、ほかとは違って学年集団や学校全体の協力が不可欠であることから、私たちはほかにはないエネルギーでもってこれに当たらねばならない。新しい学校に転勤したその瞬間からすでに勝負は始まっているといってもいい。もし、あなたが水泳のオーソリティーとして名が通っているとすればことは簡単だ。すぐにも学校の水泳に関する全ての計画を「わたしがやりましよう」と買って出ればいいのである。
しかし、あまり強引に出ると後々人間関係に尾を引くことがある。自分の意見がどの程度に支持されるのかをよく考えて3年計画ぐらいの長期的な目標を持っている方が結果的にうまくいくかもしれない。
ドル平に代表される同志会の水泳の授業が全く根付いていない学校の場合、何がほかの教師集団を説得する材料になるのだろうか。と考えたときやはり一番わかりやすいのは泳力である。そこでまず学年でのイニシアチブをとろう。「わたしにやらせてください」とバーンと指導計画を出し一生懸命説得すればたいていの場合、「では、どうぞ」ということになる。たまに水泳指導に自信をもっておられる方と一緒になるとこれがなかなか難しい。望ましいことではないが学級別に指導することや、泳力別クラスの一番泳げない子のクラスを持つということもやむおえない。要は「ではお願いします」と反対に身を引いてしまわないことだ。とにかく3年計画の1年日としてほかの教師集団を説得していく一つのステップだと考えよう。
あなたの水泳の授業を見て学年の先生たちは、子どもたちがどんどん泳げるようになることに驚くと同時に、一人一人がいきいきと動くグループ学習の方法にも感動し、発問形式の体育の授業やグループノートにも関心を持ってくれるだろう。そう考えると、水泳の授業はそれだけにとどまらず同志会の体育そのものを広く理解してもらい広めていく大きな可能性をもった絶好のチャンスなのである。(授業研のチャンスがあれば自ら立候補して指導主事を味方につけてしまうという手もある。)
このように1年日の実践で支持者を得ることができれば、次の年からは比較的やりやすくなる。指導も学年の先生を巻き込んでいけばその先生たちが次の学年に広げてくれる。学校全体に広めていける手ごたえを感じたら実技研をもったり系統指導を提案していくこともできる。
2.何を教えるのか 〜泳がせるだけでは同志会とは言えない!!〜
ここでは ドル平泳法の方法を述べるのはやめておこう。(後に参考図書を挙げておくので参考にして勉強してください。私もはじめてドル平を教えたときは永井博氏の「ぼくおよげるよ」を本屋で買ってきて次の日にプールサイドで指導したのだが、同志会の水泳分科会に参加してドル平の泳ぎ方に大きな間違いがあったことに気づいた。これは私だけではなく水ブロのMさんやSさんも同じような体験をしているので、要注意である。一度最寄りの実技講習会に出向かれることをお勧めする。)
もし、あなたがドル平のスモールステップにそって一斉指導で子どもたちを泳がせていったとしたら、面かぶりクロールでやがては泳げるようにしたのと比べて何を自慢することができるだろうか。ドル平は全ての子どもたちに泳ぐ楽しみを獲得させることを日指して研究された優れた教材である。しかし、私たちはほかの体育の教材と同じように、ただできさせるだけではなくドル平で(水泳で)何を教えるのかを問題にしなければならない。例えば鉄棒の足かけあがりを指導するときに「やり方はこうですよ。ここに気をつけましよう」とやり方を教えてやらせるといった授業をするものはいないだろう。どうすればできるようになっていくのかをできる子を見せて考えさせるといった授業を仕組むのではないだろうか。手どもたちの考えたことをみんなに返して本当にキうだろうかと検証する実験をさせるかもしれない。
それと同じように例えばドル平はどうして息つぎの後にあごを引くのか。何のためにキックするのかなどを考え、実験しながら泳ぎの仕組みを「わかる」ことを目標にする授業が考えられる。こうして、みんなでうまくなっていくみちすじを発見し整理した後、グループで教え合う授業を持つ。自分のアドバイスでどんどん友達がうまくなっていくのを見て手どもたちは自分のことのように喜び、夢中になる。「今まで何をしてもだめだった☆☆ちやんが泳げた」ことは手どもたちにとって大きな驚きであり今まで持っていた固定的な能力親を変えてしまうほどの出来事になるかもしれない。
3.例えばこんな授業も
全国の水泳分科会ではここ数年低学年の「お話水泳」が発表されている。水泳版おはなしマットと考えればイメージがわくのではないだろうか。水泳=競泳だという固定概念から抜け出した表現を教える水泳の実践である。(たのスポ1996/6月号藤井実践より)
競泳にこだわったのが大阪の牧野さんの「平泳ぎは、なぜかえる足なのか」の授業である。かえる足ができなければ平泳ぎとはいえないという考えに疑問を持ち、子どもたちと一緒に検証していく。結果がでないとき投げ出さずに専門家に手紙を出し「わからない」という返事をもらったことで、刻々と変化していく現在の最先端の泳法の実態を知り、自分たちこそが未来のスポーツを変えていく主人公であることを自覚させることになったというグローバルな実践である。
水泳全般の歴史を4択のクイズにして手どもたちと楽しく水泳の歴史を学習しながら変わっていくスポーツの主体者になることを教えた中川実践。同じく大阪の沢口・佐々木コンビは子どもたちに競泳の歴史を調べさせ教室で研究発表会をもった。床に寝ころんでこれは19☆☆年のクロールです。とやって見せるVTRは一見の価値がある。後のプールでの19☆☆年オリンピックの再現がまた傑作である。
今、注目されているのが日本泳法である。まだ実践例はないが日本古来の文化としての日本泳法にスポットをあててどんなことが教えられるのか、みなさんも是非実験的実践に取り組んでみてください。
※参考にされたい図書 水遊び&水泳 ワンダーランド/いかだ社
教育技術MOOK いきいき水泳指導と学習カード/小学館
体育科教育別冊S 水泳の授業 大修館書店
絵でみる水泳椿尊のポイント あゆみ出版
とどのつまりは 続とどのつまりは 大阪支部水泳プロジェクト